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レビュアー「ヴィリジアン・ヴィガン」のレビュー

銅

きみを守るためにぼくは夢をみるIV

マットの「夢」

レビュアー:ヴィリジアン・ヴィガン Warrior

 主人公の大江朔、初恋の人である川原砂緒、朔のことを兄のように慕う空音の、三角関係が描かれたシリーズ4作目。
 あくまで現実的な世界を描きながらもかなり童話っぽく、少女マンガのモノローグのようなおしゃれな比喩が並ぶ文章は読んでいると少し恥ずかしくなる。
 しかし慣れてくると、未来を思い描く「夢」と眠って見る「夢」の狭間で揺れていた、思春期のもやもやを不覚にも想起してしまうのだ。
 登場人物は各々、何かしらの欠落を抱えており、どうにかしてそれを補い合おうとする姿は、ときに美しく、ときに稚拙に描かれる。
 
 イラストがこの巻から、マテウシュ・ウルバノヴィチ(通称マット)に変わった。彼は元々イラストを担当していた新海誠に憧れて日本にやって来たポーランド人である。新海誠の仕事を引き継げたのだから、彼の「夢」の1つは叶ったと言っていいだろう。
 
 思春期にうっかり書いてしまったポエムを、数年ぶりに引き出しから発見しちゃうような人にうってつけのシリーズ。

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2014.01.29

銅

ハミ出す自分を信じよう

荒俣さんの奥さん美人ですよね

レビュアー:ヴィリジアン・ヴィガン Warrior

 著者である山田玲司は、250人を超える才人にインタビューした経験から、「周りに合わせて空気を読んでいるだけではダメだ」と語る。
 エジソン、ダーウィン、黒柳徹子、水木しげる、柳美里。
 成功した人達も、その昔は学校や集団に馴染めず「ハミ出した」存在だったのだと。
 だが、私は読み終えて不安を覚えた。
 世の中に「ハミ出して」いる人は沢山いて、たまたま成功した人達ばかりを例に出されてもなぁ、という不安である。
 学校や社会と馴染めず、自分を信じていたけれど野垂れ死んだ人もうんざりする程存在するに違いないのだ。
 よって、「こんな自分で良いんだ」などとは少しも思えず、むしろ「ハミ出す自分を信じ続ける」ことの難しさが提示されているように感じた。
 だが、「ハミ出す」ことのゴールは成功することではなくて、自分のやりたいことを我がままに、ときに柔軟に対応しながら追及することである。
 自分の得意分野をひたすら掘り下げてゆけば、いつか社会と関わるための貴重な道具になる可能性だってあるだろう。
 楽観は危険だ。そもそも「ハミ出す」ような奴は「続ける」ことが苦手だったりする。
 でも、恐れることなく自分を信じ「続けて」みよう。そうしておけば、例え野垂れ死んだとしても、後悔はしないはずだから。

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2014.01.29

銅

スーサイドクラッチ

えっ? これで終わり?

レビュアー:ヴィリジアン・ヴィガン Warrior

 広げた風呂敷は畳まれなかった。というのが読後の率直な感想だった。

 1作目「ストーンコールド」から伏線として、存在だけはほのめかされていた逃がし屋の息子・秋斗が3作目の主人公。
 彼の家に住みついたリストカッター少女・美尋。
 お馴染み魔術師スカンク・バッツが作る合法ドラッグの実験台である榊。
 3人に共通しているのは「もう人生終わってるけど、自分で終わらせる程でもない」という緩やかな絶望だ。
 秋斗は、中学時代の同級生で行方不明になっている沙都を、諦めていたにも拘らず探すことになる。
 スポーツマンだった秋斗が、スカンクのドラッグでボロボロになった体を、再度ドラッグで強靭に鍛え上げていく過程は、力強くも悲しい。同時にそうしなくてはならない焦りと後悔も痛いほど共感できてしまうのだが。
 秋斗、美尋、榊の3人が「終わり」に向かって進んでいるのを、自分の目的のため利用しているのがスカンクで、その様子は、もはや相手を使い潰しているようにすら見える。
 シリーズ3作目にしてまさかの伝奇小説。そして物語は中途半端なまま幕を下した。
 正直「えっ? これで終わり?」と何度も読み返してしまった。
 B級ゾンビ映画が予算切れで唐突に終わっても、過程を楽しめる人にお勧め。

 本音を言えば続編希望。

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2014.01.29

銅

人生勝たなきゃ意味が無い

負ける努力をしない

レビュアー:ヴィリジアン・ヴィガン Warrior

 中学生のときも高校のときも、麻雀にハマっている知り合いはたくさんいた。彼らは暗号のような牌の名前や、役の名前を楽しそうに語っていた。
 麻雀の漫画は読んだことがあって、ルールは分からないのに面白かったことは覚えているが、同時に物凄く大変そうだとわかり、やろうとは思わなかった。自分がやって勝てるゲームではないことだけは分かった。
 いやもう、ほんとこういうの弱い(笑)。
 麻雀のプロがいるということすら知らなかったが、どんな世界なのかは興味があった。
 この本はプロ雀士・佐々木寿人の自伝でもある。
 麻雀を本気でやることになったきっかけが、大学3年のときに親が学費を支払い忘れたためだという。感心したのは、そのことを「親のせい」にしなかったことだ。すべて「親まかせ」だったことを恥じて、大学を中退、もともと熱中していた麻雀の世界に足を踏み入れることになる。
 彼の麻雀は攻撃型だ。攻めて攻めて勝つスタイル。文章にもその攻めの姿勢が貫かれている。
「圧力(プレッシャー)を利用して飛躍せよ」「ブレない、オリない、ひよらない」「1日8局、月240局、年2800局をすべて勝ちたいと真剣に取り組み目標としている」
 マイナス思考の自分とは正反対なプラス思考の持ち主なのだが、背中をぐいぐい押してくる言葉にかなりの力を貰えた。
 勝ち負けのはっきりした世界にさらされ続けるプロの人たちは、強固なブレない芯のようなものがないと立ち行かないのだ。
 負ける要素を私生活に至るまで、バッサリと切り捨てていく姿は問答無用にカッコいい。見習いたい所はたくさんあった。「負けない努力」には届かないかもしれないが取りあえず「負ける努力をしない」ことから始めようと思う。
 負けたことを誰かのせいにしないで、きちんと受け止め次を勝つための糧にして切り替える「早さ」が大切なのだと分かった。
 麻雀が全く分からなくても読めるか? となると少しハードルが高いかもしれないが、麻雀をやったことがある人ならスラスラ読めるに違いない。
 麻雀が好きで、マイナス思考に陥りやすい人に読んで欲しい一冊。

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2013.07.08


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