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読者レビュー

銅

きみを守るためにぼくは夢をみるIV

マットの「夢」

レビュアー:ヴィリジアン・ヴィガン Warrior

 主人公の大江朔、初恋の人である川原砂緒、朔のことを兄のように慕う空音の、三角関係が描かれたシリーズ4作目。
 あくまで現実的な世界を描きながらもかなり童話っぽく、少女マンガのモノローグのようなおしゃれな比喩が並ぶ文章は読んでいると少し恥ずかしくなる。
 しかし慣れてくると、未来を思い描く「夢」と眠って見る「夢」の狭間で揺れていた、思春期のもやもやを不覚にも想起してしまうのだ。
 登場人物は各々、何かしらの欠落を抱えており、どうにかしてそれを補い合おうとする姿は、ときに美しく、ときに稚拙に描かれる。
 
 イラストがこの巻から、マテウシュ・ウルバノヴィチ(通称マット)に変わった。彼は元々イラストを担当していた新海誠に憧れて日本にやって来たポーランド人である。新海誠の仕事を引き継げたのだから、彼の「夢」の1つは叶ったと言っていいだろう。
 
 思春期にうっかり書いてしまったポエムを、数年ぶりに引き出しから発見しちゃうような人にうってつけのシリーズ。

2014.01.29

さくら
マット…!マットさんについてのエピソードだけで手に取ってみようと思う人もいそうですわ。どんなストーリーかも想像しやすいですし、思春期時代のモヤモヤを大人になって表現できる、作者ってどんな人かしらー?と、シンプルながらも心に残るレビューでしたわ。
さやわか
たしかにマットのエピソードが気になる!少なくともどんな絵を描いているかは確認したくなりますよね。こういう、読者を作品に向かわせるような内容はレビューとしては理想的だと思います。「銅」にいたしました。そういう点で言えば、「思春期にうっかり書いてしまったポエムを、数年ぶりに引き出しから発見しちゃう」ような思いをしたくない人には、あまりこの本はお薦めできないのかな?という疑問もわいてしまうのですが……(笑)。しかしそれも、たぶんどんなふうに「ときに美しく、ときに稚拙」なのかを一言でいいので具体的に引用すると、さらに説得力が増して、読者も書き手と同じ気持ちになりながら読めるかなと思います。さらにタイトルにも「マット」と「夢」という両方の要素が出てくるわけですから、両方をからめて書いてみてはどうでしょうか?

本文はここまでです。