ザレゴトシリーズの表紙を見て、その手描きではなしえないしなやかなべジェ曲線にまず心奪われたのを今でも鮮明に覚えている。
他には類を見ないなめらかで透明感のある色彩、と同時に巻数を重ねるごとに
目に見えて進化していく様は、当時の絵描き界に大きな影響を与えたと私は思う。
反面、「take」という絵描きは、私にとって非常に謎の多い絵描きの一人であった。経歴もノベルスの袖に申し訳程度に書いてあるだけだし、イラストレーターのべジェ曲線をどのように扱って制作しているかなどのメイキングもない。インタビューなどの露出も少なく、以前はあったというサイトも消えている。そんな悶々とした思いを長年抱いていた矢先のイベントである。
去年。10月29日に行われた、takeさん生お絵かきUstream。一週間に渡り七種類の猫の絵を描く企画の「きんようび」の猫を、リアルタイムに放送するという試み!これに参加せずして何が「take」さんファンだ!という意気込みでUstreamに接続した次第である。
作品の制作は、圧巻だった。独特のなまめかしい線は、魔法のように引かれ下書きはすぐに普段原稿として使われているレヴェルにまで昇華される。色の決め方や、細かいディティール、ポイントの置き方など、ファンにとっては眼福の、そして同じ絵描きにとっては非常に刺激的な一夜になったことと思う。
また、作者と受け手がこれだけ近くなったのか、という驚きも新鮮だった。もちろん、皆距離的にはそれぞれとても遠いところにいる。しかし、Ustreamを窓口にして、一種の一体感というか一種のライブ感があったことは、あの場にいた全員が知っていることだろう。流れるツイートの中で質問があれば、画面上で本人が(!)リアルタイムに答えてくれるという楽しさ。ツイートの中にも流れがあり、議論したり共感したりと、同好の士とツイートを介して交流できる場にもなったと思う。
一人孤独にネットの海を徘徊するのも楽しいが、皆で一つの場を共有する私にとってはまさに革命的な体験だった。
世界は繋がっている。
ネットを通して一つの場所に集う時、私達は作者も含め静かな熱気を、確かに共有しているのだ。