「推理推参っ 理を推して参る」
そんな決めゼリフの名探偵あ~やこと、斜岩=バスガヴィル=綾と、硬派・純情・一途と三拍子揃った不良兼ワトスン役の少年、孫 和人(そん かずと)の二人を中心に物語は進行する。
あ~やは「崩壊者(ディザスタ)」と呼ばれる超常の存在が引き起こした「非合理な」事件に、「合理的解決を与える」事によって世界を保護する「推理者(ディティクタ)」と呼ばれる存在であり、和人少年もまた「観察者(ディレクタ)」と呼ばれる特殊な存在なのだ。
二人は頭脳と、現実を改変する魔法のパイプ「恣意的ミスト」を駆使して次々と難解で不可能な犯罪に決着をつけていく!
……とまあ。
ここまでだって別に嘘は吐いてないんですが。
この物語の本質はそこじゃない!
そんな頭脳ゲームのような堅苦しさとは無縁なのです!
レビューの場で適切なのかはわかりませんが、かつて松井優征先生が自身の作品「魔人探偵脳噛ネウロ」のことを「ミステリーの皮を被ったコメディー」と評しておられたことがありましたが、「あ~や」を読んでいて不意にその言葉が甦りました。
間違ってもハードボイルドな探偵と助手がクトゥルフじみた化け物と推理合戦を繰り広げる伝奇ストーリーではありません。世間知らずと、馬鹿と、馬鹿で変態な人たちがコミカルに活躍する不条理ギャグマンガです。とにかく笑えます。「コンバージョン・ブルー」のカッコイイ錦メガネ先生はどこに行ってしまわれたのでしょう……。
さて。
しかし、です。
私にはこれがどうにもただのギャグマンガで終わる作品には思えないのです。
確かに「あ~や」はミステリーの皮を被っていますが――その本質は、まだ誰にも判らないのです。
……ま。深読みかもしれませんが。
ただ笑いたい人も善し、今後の展開を深読みするも善し、真剣に理を推すも善し、……シオミヤイルカ先生の絵に惚れ惚れするも善し!
とにかくこの作品を読んでみて下さい。
きっと、更新が待ち遠しくなりますよ。