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読者レビュー

銅

非実在推理少女あ~や

ミステリーの皮を被ったナニモノか

レビュアー:牛島 Adept

「推理推参っ 理を推して参る」
そんな決めゼリフの名探偵あ~やこと、斜岩=バスガヴィル=綾と、硬派・純情・一途と三拍子揃った不良兼ワトスン役の少年、孫 和人(そん かずと)の二人を中心に物語は進行する。

あ~やは「崩壊者(ディザスタ)」と呼ばれる超常の存在が引き起こした「非合理な」事件に、「合理的解決を与える」事によって世界を保護する「推理者(ディティクタ)」と呼ばれる存在であり、和人少年もまた「観察者(ディレクタ)」と呼ばれる特殊な存在なのだ。
二人は頭脳と、現実を改変する魔法のパイプ「恣意的ミスト」を駆使して次々と難解で不可能な犯罪に決着をつけていく!

……とまあ。
ここまでだって別に嘘は吐いてないんですが。
この物語の本質はそこじゃない!
そんな頭脳ゲームのような堅苦しさとは無縁なのです!
レビューの場で適切なのかはわかりませんが、かつて松井優征先生が自身の作品「魔人探偵脳噛ネウロ」のことを「ミステリーの皮を被ったコメディー」と評しておられたことがありましたが、「あ~や」を読んでいて不意にその言葉が甦りました。
間違ってもハードボイルドな探偵と助手がクトゥルフじみた化け物と推理合戦を繰り広げる伝奇ストーリーではありません。世間知らずと、馬鹿と、馬鹿で変態な人たちがコミカルに活躍する不条理ギャグマンガです。とにかく笑えます。「コンバージョン・ブルー」のカッコイイ錦メガネ先生はどこに行ってしまわれたのでしょう……。

さて。
しかし、です。
私にはこれがどうにもただのギャグマンガで終わる作品には思えないのです。
確かに「あ~や」はミステリーの皮を被っていますが――その本質は、まだ誰にも判らないのです。

……ま。深読みかもしれませんが。

ただ笑いたい人も善し、今後の展開を深読みするも善し、真剣に理を推すも善し、……シオミヤイルカ先生の絵に惚れ惚れするも善し!

とにかくこの作品を読んでみて下さい。
きっと、更新が待ち遠しくなりますよ。

2011.02.10

のぞみ
文章が読みやすくて、わかりやすかったです!
さやわか
ですなー。冒頭でしっかりと作品のアウトラインを紹介して、次に「でも、この作品は実はこうなんだぜ!」という部分が来るので、読んでる人を「おっ、どういうことだろう?」と思わせる。こういう文章の構成力って大事なのに、意外と身につかないものなので、牛島さんはそれなりに文章を読んでいるか、さもなくば基礎的な素養、すなわちセンスを備えているものと思われます。
のぞみ
この作品を純粋に読んでみたいな~って思います。ちなみに、私はあの絵に惚れ惚れしました(笑)。
さやわか
うんうん、シオミヤさんの絵に惹かれてもいいと書いてありますので、それでいいのです! ていうか「いろんな読み方ができる作品だよ」と書いているのがイイ! 自分の読み方を強要していないのがこのレビューのいいところです。実際、エンタテインメント作品の作者って、同時にいろんなことを考えて作品を作ってるわけです。一方では単純に面白がれるように作りつつ、別の部分では文学的実践をしていたりするわけで、牛島さんはそのことを適切に指摘してますな。逆に言うと「……ま。深読みかもしれませんが」という気弱な発言は書かなくてよし! そのほうが主張が明確になっていいのではないかと。「どうにもただのギャグマンガで終わる作品には思えない」という部分については、あくまで「何となくそう思う」という言い方で終わってますが、このレビューを読んだ人に「じゃあ、どんな作品なんだろう?」と思わせるのには十分な効果があるので、これはこれでよいと思います。ということで「銅」とさせていただきます!

本文はここまでです。