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「星海社文庫」のレビュー

銀

星海社単行本の造本

あなたとつながる青い糸

レビュアー:Thunderbolt侍 InitiateInitiate

星海社の造本に対するこだわりに好感を持っている。特にB6サイズ単行本は紙質、斤量書体すべてがお気に入りだ。過去資産との統一にとらわれない新興出版社らしいモダンな仕様にまとまっていると感じた。一言で言えば「上質で読みやすい」(天アンカットだけがちょっと残念。「高級感あふれる」かなぁ?)。

目を引くブルーのスピンも良い。
本体の約1.4倍という長さも適切だと思う(ちなみに文庫本のスピンはちょうど根元と尖端部でロゴの切れ目がつながるようになっていて、高級ブランドのモノグラムキャンバスっぽい)。

そしてこのスピン、太さと材質がかなり変っている。一般的なスピンは幅2mm前後の柔らかいレーヨン製なのだが、星海社書籍のスピンは幅6mmと極太な上、素材も化学繊維のように見える。レーヨンと比べてやや硬めのため、栞として使う際、少々天から飛び出して(余って)しまうことが多い。ようは、大変目立つスピンなのだ。

電車やカフェなどで読書しているとき、向かいで同じように読書している人の本からこの青いスピンが飛び出しているのを見ると、ちょっとうれしくなる。今どきはみんなきちんとブックカバーをかけているので何を読んでいるのか分からないけれど、星海社の本を読んでいるということは分かる。星海社の本を選ぶ人は、おそらくきっと、けっこうな本好きだ。あなたも”そう”なんですね。

先日、上野駅構内のカフェでそういう人を見かけた。読んでいるのはなんだろう「マージナル・オペレーション」第二巻かな?

P.S.
新書にもスピン付けませんか?

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2013.06.11

「星海社文庫」のレビュー

銅

星海社FICTIONS折り込みチラシ(?)

心を奪われた一枚

レビュアー:ticheese WarriorWarrior

毎月の楽しみである星海社文庫。
4月発行分には文庫の中にとっておきの贈り物が挟まれていた。

なんと呼ぶかは知らない。
いつもなら呼び名も気にせず一通りチェックだけして捨ててしまう
正式名称不明の折り込みチラシ。
しかしこれは永久保存用に決める。

星海社ブラックの中に浮かび上がる美しい表紙。
鮮やかな挿し絵。
美しい印字と真っ白な紙の上を走る青いスピン。

本一冊でここまで魅力的な写真が撮れるものか。

これは
インテリアショップのカタログのようでもあり、
クリスマス前に親から渡される玩具屋のチラシのようでもある。

ココに載ってる本が欲しい。

良い歳した大人が真剣にあと数日が待ち遠しい。
星海社FICTIONSが待ち遠しい。

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2011.05.09

「星海社文庫」のレビュー

銅

星海社文庫の投げ込み広告

「今ここにある」広告の形

レビュアー:横浜県 AdeptAdept

 紙媒体の広告は遅い。電子媒体の広告は速い。インターネットが普及した今、あらゆるWebサイトにはバナーが貼られている。もしも躍るコピーに心を奪われたなら、リンクをたった1つ辿るだけで、即座に商品の情報を得ることが出来る。では紙媒体の広告はどうだろうか。紙面は限られている。Webのように、無限の空間は存在しない。さらに広告の受信者たちが、実商品へと辿り着くまでには、長いタイムラグが存在する。広告で見た筈の書名が、店に行くと思い出せない。そんなもどかしい経験こそ、広告と実商品との間に横たわる、埋め難い時間の差が生み出しているのだ。
 果たして紙媒体の広告は、ネットよりも劣る速さを、何らかの形で補えないのだろうか。その答えは星海社文庫の投げ込み広告にあった。4月刊行物に挟まれていたものだ。これにより、私は実商品が「今ここにある」と錯覚させられてしまったのだ。
 表紙には文庫本が写されている。試しに中を開くと、そこには「ひぐらし」の218,219ページが、でかでかと2面ぶち抜きで掲載されていた。さらに1枚を捲ると「星海社文庫の3つの特徴」が現れた。これを目にした時、私は驚きを禁じえなかった。広告の受け取り手たる私は、文庫本の中身が写真により、「3つの特徴」を実際に体験することができたのだ。例えば特徴1の造本である。スピンや天アンカットが写されているので、実際にその色や形を、紙面で確認することができた。フルカラーのイラストや、読みやすい版面もまた然りである。まるで「今ここにある」文庫本を手に、「3つの特徴」を直で感じているかのようだった。
 次に注目したいのは、「ひぐらし綿流し編(下)」と「Fate/Zero4」の広告である。もし普通ならば、表紙のイラストが掲載される程度だろう。例えばこの投げ込み広告の裏面に掲載されている、「エレGY」が将にそれだ。ところが上に挙げた2作品は、実際の文庫本を俯瞰的に眺めた写真で紹介されている。そこには、微かに覗く背表紙がある。表紙と帯の境目がある。薄らと落ちる影がある。ここに私は、本としての厚みを感じた。平面でしかない紙媒体の上に、2冊の文庫本が存在している重みを感じたのだ。
 上記2点から、私は星海社文庫が「今ここにある」のではないかと錯覚した。その臨場感は、今までの紙媒体には欠けていた物だ。「如何に速い段階で、受信者に実商品を体験させうるか」という命題は、ネット上ではある種の必要条件として、常に真たらしめられており、しかし紙媒体においては、ずっと避けられ続けていた。この投げ込み広告は、その難題に真正面から立ち向かっている。画期的なことだ。何しろ前例がないのだから。これから紙媒体の広告が、ただの情報が掲載された紙切れであり続けたとしても、恐らく誰も困りはしないし、現状が変わることもない。だがそれで好いのだろうか。世の中の作品群が、常に新しい才能や面白さを求め続ける中、それを報じる広告のみが、足踏みをし続けるだなんて、私には納得が行かない。紙の広告には、確かに拭えない短所がある。だがそれを割り切っている暇があれば、欠点を克服するために動くべきだ。星海社文庫の投げ込み広告は、未来に開かれた可能性の一端を、私たちに示してくれた。でも当然これが全てではない。きっとまだまだ、私たちが目を見張るような広告は現れるだろう。それらは情報の受信者を驚かせ、楽しませ、購買意欲を十二分にそそってくれるはずだ。もしそんな広告と、次にまた出会う機会があるのなら、今度も星海社の作品だろうと、私は期待してしまうのだ。

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2011.05.09

「星海社文庫」のレビュー

銅

星海社文庫とそれに対するレビュー

愛蔵版という意味

レビュアー:牛島 AdeptAdept

このレビューはレビュアーのyagi_ponさんとオリミさんのお二方のレビューを下敷きに書いています。
なので、先にそちらを読んでもらうほうがいいかと思います。どちらもとても参考になり、またとても熱いレビューです(お二方が指摘していたことで同意する点は、割愛しました)。

私が星海社文庫を手に入れたのは(私用で忙しかったというのもあって)3月刊からですので、文庫を購入する前にお二方のレビューを見ることとなりました。レビュアー騎士団を有効活用した思いです。

さて。モノ自体のレビューに移る前に、少し前置きを。
星海社文庫を書店で買う前、正直かなりの不安がありました。
通販サイトのコメントでは皆かならずしも肯定的ではないし、ぶっといスピンはあちこちで否定されているからです。それを見ているとひょっとして失敗してるのか? という思いが湧き起こってきたのです。

それはちょっと使いづらい、程度では済む問題ではありません。

この星海社文庫が「小さな愛蔵版」を謳っている以上、その体裁を変えることは叶わないでしょう。愛蔵・蔵書と言われればハヤカワの銀背・金背や円本などをイメージする私としては、愛蔵版にはやはり一種の統一感を持って、本来パーソナルなスペースの本棚で自己主張するという「レーベルが持つ腕力」みたいなものが必要だと思うからです。
銀一色に揃えられた本棚は、たとえSFに興味が無い人でも「何かわからないけどスゴイ!」と思わせるものがあります。まさに背表紙が語るのです。
本がデータではなく物体であるということの最たる例ではないでしょうか。

そこで星海社文庫です。
曰く、挑戦的な装丁である。
曰く、細部に神が宿るほどのこだわり。
そうした工夫が理解される分にはいいですが、それを理解しない読者の方が多かった場合――間違いなく星海社文庫は批判に晒されるからです。ビッグタイトルから始まった星海社文庫なら、粗探しの目はなおさらそちらに行くでしょう。PS3発表時の騒動に泣いた人もいるかと思います。あまり気分のいい話ではありません。

そういった不安を胸に抱えたまま星海社文庫を買いました。

そして、結論から言うと杞憂でした。

というか買うときに不安だったとかいうのは嘘です。Fate/Zeroとひぐらしの新規イラストにテンションが大変なことになってます。レジまでの道のりすら楽しいのです。レーベルの未来とか気にしてられません。他人の意見も気にしてる余裕がありません。
同人のときのイラストが消えた?後で第7巻・ファンブックとして出せばいいじゃないですか!

で。
家に帰って中身を検分します。
ビニールを剥がし表紙を捲った瞬間、びびりました。長ッ!カバーの折り返しが、こう、長いっていうかもはや広い!
なにせほぼ全面イラストに覆われます。
話に聞いていたのに驚いてしまうこのカバー、正直一番グッと来たポイントでした。別にイラストがアサシン(♀)だったからとかではなく。

次にスピンです。なるほど確かにこのスピンは太い。幅6ミリほど。紐ではなくリボンですね。あまり収まりがよくないのも事実です。読書中は外に出しておくのが得策かもしれません。背表紙と指で挟むと、やはりそれなりの太さのおかげで、割と触り心地がいいです。
ところで、スピン自体の存在価値を少し考えたいと思います。
栞とスピンは「天から抜く」か「地から引く」かで決定的に違います。そう考えると明らかに使いやすいのは栞で、スピンの利点は一々用意しなくともいいということぐらいでしょうか。
しかし近年の文庫には、もはや一冊に一つ栞がついてくるのがあたりまえ。おそらくどの本読みの家にも、今、手に届く範囲に栞があるでしょう。私は家中至る所に何かに付いてきた栞があります。
ではスピンとはなんなのか。“高級感”を出すための小道具なのでしょうか。
現在のスピンには実用的な価値よりも装丁としての意味の方が明らかに強いと思います。
では、そもそも実用性を語る事がナンセンスなのでしょうか。

「別にこれでいいじゃないか、ロゴが入ってオシャレだし。既存のスピンに劣る部分があっても、それは仕方ない」

そんな投げ遣りな感想を抱きかけたそのとき――というか投げ遣りに思って、今月分の読書費の大半を費やして買った星海社文庫6冊を本棚に並べたとき、気付いたのです。
ブルーとホワイトの2色に塗り分けられた背表紙――その上です。
一列に並んだ星海社文庫の背表紙の上には、隣り合う文庫には無いものがあります。スピンです。6ミリもあって実用的じゃなくて綺麗に本の中に収まらなくて、どうやってもはみ出すそれが、本棚から覗いているのです。
直感的に悟りました。このスピンが持つ不自由さは、このスピンが持つ不完全さは、星海社文庫で一段埋め尽くしたときに解消されるだろう、と。
背表紙で語る愛蔵版にあって、背表紙以外のモノが見える。このチラリズムにはやられました。既存のスピンにない価値を付与する。それもこんなやりかたで……!
目から鱗の思いでした。

では最後にQRコードについて書いておきたいと思います。
以前から私はQRコードを本に記載するということが、実はかなりスゴイことなんじゃないかと思っていました。
なにせ、インターネットは本の外側なのです。愛蔵版はそのスタイルを変える事はできなくとも、その外側にあるサイトはいくらでも手を加える事ができるのです。それも本に根ざした形で。その点、パソコンを通して検索をかけるのとは大きな違いがあります。
本棚に収まってなお、メディアとして成長する。それはきっと、誰も体験した事がない読書になると思うのです。予定されている連動企画も非常に楽しみです。

で、そのQRコードですが。
今までにも連動させてきたレーベルはいくつかあるのですが、どれも申し訳程度に背表紙に小さくある程度でした。少なくとも私の知る限り、一個のデザインとして取り入れたのは星海社文庫が初めてではないでしょうか。
ここに現れる星海社の本気度に嬉しくなります。

さて。
手に入れる前までは不安があった星海社文庫ですが、実際に集めて、読んで、収納してみると、やっぱり紙の本っていいな、と思わせてくれる一品でした。
これから先、この「小さな愛蔵版」がどんな評価を受けていくのかはわかりません。批判に晒されることは、尖った存在として避けられないと思います。

ですが私はこのレーベルに心を動かされました。
このレーベルで本棚を埋めてみたいと強く感じました。

願わくは、いつかずっと後になって、誰かが本棚を見たとき――このブルーとホワイトのツートーンカラーに染められた本棚の中身を知らなくとも「何か分からないけどスゴイ!」と感じてくれる、そんな本棚をゆっくりとつくっていきたいと思います。

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2011.03.22

「星海社文庫」のレビュー

銅

星海社文庫それ自体

星海社文庫の洗練された素っ裸が好きです。

レビュアー:yagi_pon NoviceNovice

星海社のこだわりが詰まった、星海社文庫についてレビューします。

まず、「小さな愛蔵版」というネーミング。
普通文庫っていうのは、単行本の型落ち的な要素が強くて、どの出版社から出てもだいたい同じ形。そこに、文庫なのに外見から主張するその気概。新しい会社ならではなのかな?

とにかく、その気概に★★★★★

次は、一番見えやすいこだわりであろう、天アンカット+スピン。
この組み合わせは、スピン好きの自分としてはたまりません。スピンが2本ついてるっていうだけでその単行本を買ってしまうくらいですから笑。こりゃ新潮文庫から浮気ものです。

このコンビは高級感あって、すごくいいです。けれども。ちょっとスピンが太い、太ましい。本を読んだ後は、売り場に置いてある本同様、スピンを本の中にきれいに収めたい自分としては、星海社文庫に関して試行錯誤中です。

というわけで、スピンがちょっと使いづらいから★★★☆☆

続いては、背表紙。普段は本棚にしまってあるため、そのとき見えるのはココだけ!という、意外と重要なポイントです。
全体のレイアウトと同様に、白を基調として青のラインは、個人的にも好きな色合い。

しかし、なぜココに遊びが少ない…。さきほど出た新潮文庫は、初めて新潮文庫の本を出した著者のものは、最初の一冊は背表紙が白で、次の本から背表紙に著者別のカラーがついたり(←これは最初からシリーズものを出してる時点で星海社文庫には難しいけど)、他の文庫でも、形に差異がない分、背表紙の著者別カラーをつけてみたり。
新潮文庫の山崎豊子さんや塩野七生さん、講談社文庫の西尾維新さん、みたいなちょっと特別な背表紙やデザインが好きなので、少し残念です。

まとまりはあるけど、個人のカラーが出せないので★★☆☆☆
(初版のみ星海社カラーで、増版分からは独自カラーとかの仕様だったら、泣いて謝ります。)

そして、自分としては表紙カバーをとって素っ裸の状態で読むのが常なので、そこについても。
カバーを外すと、わりと高級感のある印象。世の中で表紙絵入りのライトノベルが名前通り軽く見られてしまうように、表紙がイラストだとポップになりすぎるきらいがある。けれども、カバーをとった瞬間から別の顔。急に洗練された文庫本に早変わりします。

けれどもそれって、愛蔵版とはまたちょっと意味が違う?2度楽しめるっていうのはいいと思うけれども。

まぁでも、自分は洗練派なので、★★★★☆

あとは細かいところをいくつか。

まずカバーの折り返しが長い。書店としてもありがたいみたいですね。読む方としてもそこに挿絵がついていたりすることはうれしいです。出版社としても、著者・イラストレーターの紹介をして、さらに今後の宣伝までできる。Win-Win-Winな工夫ですね。

次は「DIVE INTO THE BOOKREVIEW & INFORMATION!」ということで、かわいいバーコードが、すぐにその本のレビューへ誘ってくれるという仕様。店頭POPだけでなく、書店で手に取ったときに生の感想をすぐ見れるのは良い。けれども、つまらない本だったらバレちゃうわけだから、ある意味いい本作ってます、という自身の裏返しでもあるのかな?すぐレビューがみたいっていうのは、すごくインターネット的な発想。

あとはカバーの触り心地。触っていて気持ちがいいくらいだけど、手はすべらないくらいでちょうどいい。まぁ自分は読むとき外してしまうので意味ないですが笑。

以上、「神は細部に宿る」を体現したようなこだわりは★★★★☆

と、いうわけで、星海社文庫それ自体のレビューでした。こだわりが多い分だけ、書くことも多い。
きっとまだ、見つけられていないこだわりがあると思うので、そういったものを探しながらの読書は、楽しみが増えますね!

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2011.02.10

「星海社文庫」のレビュー

銅

星海社文庫

未踏の海への進路を切り開かんとする、新たな文庫形態

レビュアー:オリミ

始動以来、主にウェブサイト『最前線』で活動していた星海社による、初の紙媒体での出版物。

それが星海社文庫である。
『小さな愛蔵版』という方針を掲げ、きらめく星の海を往く、濃密な物語が詰め込まれた古今無比の宝箱。

その第一陣が発売されるやいなや、私は書店に駆け込みノーシンキングで購入した。

期待と高揚に胸を膨らませながら自宅に帰り、さっそく『Fate/Zero』から取り掛かることにする。同人誌版は読了済みだが、文庫になったということで改めて読み直したくなった。

内容に目を通す前に、まずカバーの折り返しスペースの広さに驚く。幅広い。これだけ広ければ、様々なイラストを載せることが可能だ。本の中身だけでなく、こんなところでも読者を楽しませようとする細かな配慮を感じる。

ページをめくって読み進めてみる。
高級本文用紙を用いたことにより、カラーイラスト・図版・写真の類がシームレスに楽しめるとは耳にしていたが、同人誌版であった冒頭のステータス表示やモノクロの挿絵がなくなっているのはいただけない。

本分のフォントは凛々しく緊張感の漂うもので、クラシカルな時代性とフレッシュな現代性が両立する格調高い味わいとなっている。姿勢を正して読むのもよし、ベッドに寝転がって読むのもよしと、リーダビリティは高水準である。

出版されている文庫の中でも一部にしか施されていないスピン&天アンカットが星海社文庫の特徴の一つだが、このスピンが大きくて個人的には使いづらい。星海社のロゴを入れることで、デザインとしては高級感溢れる体裁かもしれないが、幅が広いので本が少々閉じづらく、機能性が今一つ欠けている。

他の出版社に比べて、かなり手間暇をかけた造本だというのはひしひしと伝わった。文庫形態の概念を塗り替える挑戦的な装丁――星の海を渡るに相応しい一歩である。

だが、ここからが真に肝要なところだろう。ただ出版しただけで満足しきってはいけないはずだ。冒険とは旅立つだけでは意味がなく、何かしらの成果を得なくてはいけない。

これから先、星海社文庫はどのような輝きを見せてくれるのだろう。中途で力尽き挫折に終わってしまうのか、それとも、未だ人々が辿り着き得ない新世界へと我々を導くのか。

――今後とも、星海社の動向から目が離せない。

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2011.02.10


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