ジハード1 猛き十字のアッカ
全巻揃ってから買えばよかった…
レビュアー:鳩羽 Warrior
もし自分がこの小説のなかに入りこめるとしたら、一体どこにいたいと願うだろう。
ヴァレリーのように、西欧人でありながらイスラム軍の旗下に加わるだろうか。
エルシードのように、己の正義と責任を極限まで研ぎ澄ませて燃やし尽くそうとするだろうか。
いや、こちとらただの凡人なのだから、才ある人々の手助けをしながら彼らの活躍をそばで見ているのがせいぜいかもしれない。
そうでなければ、戦いに巻き込まれ、周りも見えずに右往左往しているのが関の山だろう。
おもしろい小説は多々あれど、おもしろくて「よくできている」小説に出会うと、ついこういう空想にふけってしまう。
その小説のなかに自分が入り込んで、一緒に戦ったり生活したりできるような気がするのだ。
そうしたところで、こういった小説は微動だにしない。
ゆるがない土台と強度、歴史とストーリーに支えられているから、安心して心をあそばせることができる。
しかし、小説のなかに生きてしまえば一人分の目を通した世界しか見えないのもまた事実。
押し寄せてくる十字軍に備えるサラディン、それぞれの思惑をもって迫るフィリップ尊厳王とリチャード獅子心王、どちらにつくともはっきりしないイタリア商人たちに暗殺集団。
これらすべてを概観できるのは、やはり小説読者ならではの特権かもしれない。
その愉悦と空想のあいだで、時間は不思議な、濃密な流れ方をするようだ。
あやなる戦いの絵巻のなかに、自分によく似た人間を発見するとき。
確かに自分も、この小説のなかに生きていると思うからだ。
ヴァレリーのように、西欧人でありながらイスラム軍の旗下に加わるだろうか。
エルシードのように、己の正義と責任を極限まで研ぎ澄ませて燃やし尽くそうとするだろうか。
いや、こちとらただの凡人なのだから、才ある人々の手助けをしながら彼らの活躍をそばで見ているのがせいぜいかもしれない。
そうでなければ、戦いに巻き込まれ、周りも見えずに右往左往しているのが関の山だろう。
おもしろい小説は多々あれど、おもしろくて「よくできている」小説に出会うと、ついこういう空想にふけってしまう。
その小説のなかに自分が入り込んで、一緒に戦ったり生活したりできるような気がするのだ。
そうしたところで、こういった小説は微動だにしない。
ゆるがない土台と強度、歴史とストーリーに支えられているから、安心して心をあそばせることができる。
しかし、小説のなかに生きてしまえば一人分の目を通した世界しか見えないのもまた事実。
押し寄せてくる十字軍に備えるサラディン、それぞれの思惑をもって迫るフィリップ尊厳王とリチャード獅子心王、どちらにつくともはっきりしないイタリア商人たちに暗殺集団。
これらすべてを概観できるのは、やはり小説読者ならではの特権かもしれない。
その愉悦と空想のあいだで、時間は不思議な、濃密な流れ方をするようだ。
あやなる戦いの絵巻のなかに、自分によく似た人間を発見するとき。
確かに自分も、この小説のなかに生きていると思うからだ。