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「編集部ブログ」のレビュー

銅

学生としての執行猶予がついに切れた話

from学生to編集者

レビュアー:mizunotori

名文である。

六年にも渡る努力を捨てて、全く別の何だかよく分からない道へと、一歩を踏み出す。その転機に抱いた不安、を上回る期待、そして己を案じてくれた周囲への感謝が、素直な文章で綴られている。コンコルドの例を引くまでもなく、「努力を無にする」ことは一般に強く恐れられるものである。山中先生の勇気に敬意を表したい。

人生について相談できる友人が少なくとも十人はいるというのも、ノーフレンドな私にとってはまったく羨ましいかぎりである。山中先生が偉大な編集者になれるかは分からないが、「人と出会う才能」という、編集者にとって最も重要な才能は、きっと備わっているのだろうと思う。

さて、この記事について、星海社副社長・太田克史氏がTwitterで反応して曰く、

「僕はたしかに『本気のブログを書け』とはいったが『自分語りをしろ』とはいってない!(笑怒)」

「当たり前の話だけれど、編集者は、語るべき自分の遙か手前に、語るべき作家や作品があるべきだと思う。」

この指摘には深く首肯する、と同時に、一読して名文だと騒いでいる、冒頭の自分に恥じ入るばかりである。いや、名文であることに違いはないだろう。しかし、これは「元・理系大学院生の名文」ではあっても、「編集者の名文」では、きっとないのである。

太田氏が期待していた「本気のブログ」とは、本来はどのようなものだったのだろう? 山中先生が「語るべき作家や作品」とは何だったのだろうか?

と考えてみると、これはもう『ブレイク君コア』しかあるまい。第1回星海社FICTIONS新人賞受賞作にして、山中先生が編集者として初めて掘り出した「原石」、このブログが書かれたその日に発売された小泉陽一朗のデビュー作。山中先生はこの作者について、この作品について、本気で語るべきだったのだ。「編集者としてのひとつの成果がついに刊行された話」なんてね。

もちろん、山中先生の才能をもってすれば、次なる「原石」との出会いも、そう遠くないに違いない。そのときには、編集者として書かれた「本気のブログ」を、是非とも読んでみたいものである。

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2011.08.17


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