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「資本主義卒業試験」のレビュー

銅

「資本主義卒業試験」

「資本主義って何それ? おいしいの?」「おいしいよ!(一部の人が)」

レビュアー:オペラに吠えろ。 LordLord

「ジェシー、どうしたんだい? きみが暗い顔しているからか、今日は太陽も困り顔で、雲の向こうに引っ込んでしまったよ?」
「はぁい、マイケル。実は資本主義が何かわからなくて、困っているの。このコークも資本主義の産物なんでしょう?」
「何だ、そんなことかい! そういうときはね、ジェシー。この『資本主義卒業試験』がぴったりさ!」
「まあ、ステキ! でもマイケル、ごめんなさい。わたしは学校にいたときに『ジェーン・エア』を課題に出されても読めなかったくらいの活字嫌いなの」
「はっはっは! それなら大丈夫だよ! この本を書いた山田玲司という人はもともと漫画家でね、この本も各章の最初は漫画になっているんだ!」
「わおっ! それってすごく、わたし向きな気がしてきたわ!」
「おまけに、全体は寓話調になっていてね、とても読みやすいんだ。『ジェーン・エア』が読めなかったきみでも、子どものころはイソップ童話を楽しむことくらいはできただろう?」
「まあ、意地悪なことを言うのね、マイケルったら! イソップ童話だったら、わたし、幼稚園では年下の子に読み聞かせたことだってあるわ!」
「だったらオールオッケーさ! それに文章になっているところは会話文がほとんどだからね。ほら、きみがいつもそのブラックベリーで見ている全編会話文のやつがあるだろう?」
「ああ、SSのこと?」
「そう、そのSSみたいにとても読みやすいと思うよ」
「もう、マイケルってば! そんなわたし向きの本があるなら、どうしてもっと最初に教えてくれなかったのよ?」
「まさか、きみみたいにホットなガールが資本主義に興味があるなんて知らなかったからね。良ければ、僕はもう読んでしまったから、きみにこの本はプレゼントするよ」
「まあ、マイケルってば! あなたは、本当に寛大なんだから! 他の女の子にもそうしているんじゃないの?」
「まさか。僕に本をプレゼントさせるほど魅力的なガールは世界にきみだけさ、ジェシー。値段も820円(税抜き)だから、そんなのは僕にとっては屁のカッパだしね」
「もう! あなたは口ばかりが上手なのね!」
「時にジェシー、どうして今になって資本主義のことを知りたいと思ったんだい?」
「実は、このあいだデートしたカールに言われたの。『おまえは資本主義の犬だ!』って」
「カール? カールだって? それってまさか……」
「そう、カール・マルクスよ。ほら、こないだソビエトから亡命してきた」
「ジーザス・クライスト!」
「ちょ、ちょっとマイケル! いきなりどうしたのよ?」
「ジェシー、きみがカールと付き合うことは決して否定しない。けれども、彼の言うことを鵜呑みにしちゃいけないよ。物事は多面的に見るべきなんだ」
「(あ、あら……? ジェシーの様子が……)」
「たとえば、この『資本主義卒業試験』だけど、全体的にはかなり極端に誇張されている部分があって、フィクションとしての面白さを優先したところがある。たとえば、作中に登場する『資本主義ランド』が某夢の国をほうふつさせるところとかね。そういうところは、割り切る必要があると僕は思うんだ」
「そ、そうなのね……」
「でも、だからといってね、ジェシー。僕はきみに、著者の意見を頭ごなしに否定するような人にもなってほしくないんだ。他人の意見もまた一つの意見として、自分の中で消化してほしいと思っている」
「え、ええ……」
「そのことを踏まえた上で、これを読んでほしい。そして」
「そして?」
「そして、自分の中で資本主義がどういうものなのかということを判断してほしい。そう、カールか、僕か、どちらがきみのボーイフレンドとしてふさわしいかを判断するようにね」
「ちょ、ちょっと、マイケル! それって、まさか……」
「おや、もうこんな時間だ! ごめん、僕はこれからジムでワークアウトした後、ジョンたちとパブで会う約束をしているんだ! もう行くよ! それじゃあ、アディオス!」
「マ、マイケルー!」

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2014.05.20

「資本主義卒業試験」のレビュー

銅

資本主義卒業試験 著:山田玲司

平成生まれの僕

レビュアー:キノケン NoviceNovice

平成生まれの僕にとって、資本主義社会とは所与のものであって、それが当たり前のものであった。市場を崇め、自らの努力によって立身することができる社会。それが僕の知っている「社会」であった。
それがこの本に見事に打ち崩されてしまった。人間(特に、中途半端に学問をかじっている僕のような人間)は、極力自らの立場を客観的な場所に位置づけようとする。少なくとも僕と、周りにいる学友たちはそうである。だが、いかに自らを客観的に仕立て上げようとしても、やはり人の根底にあるのはその人間が育った環境である。その環境を疑うことができる人間なんて、そうそういるものか。
だが、この本の筆者はそれをやってのけた。自らが身を落としている社会の矛盾点や欠点を見出し、さらにそれだけではとどまらず、より幸福に生きるための示唆まで与えてくれている。こんなに素晴らしい所業ができる人が、現代社会にはいったい何人いるのだろうか。
この本を読んだ人には、ただ資本主義の穴や、その改善方法を知るだけにとどまらないでほしい。筆者のように鋭い批判的な視点、それを持つことの重要性にも気づいてほしい。
この本はまさに、資本主義社会に染まった僕たち若者の世代には、必読の書であると思う。

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2012.02.18

「資本主義卒業試験」のレビュー

鉄

資本主義卒業試験 著:山田玲司

資本主義は悪なのか?

レビュアー:ジョッキ生 KnightKnight

ここに出てくる登場人物はそれぞれに苦しんでいる。夢を追い、成功を収め、しかし幸せにはなれないと言い、そしてそれは資本主義の所為だと結論付けている。

成功→成功→成功→
このループは確かに際限が無く、失敗による転落の可能性を考えればその心に余裕は無くなり、結果不幸になりやすいというのも理解できる。

じゃあ程々でいいじゃないかというと企業に所属している限りそれは望めず、ノルマという重責に押しつぶされて最後には死を選ぶことすらある。

何故こうなってしまうのか?そこには人が持つ嫉妬の感情が大きな力を持つ気がする。

人より上に立ちたい、人より金持ちになりたい、人より人より人より・・・。他者に認識されることによってしか自分を確立できない人にとって、羨望の眼差しとは最上の存在意義になりえる。

その結果、資本主義の歯車に組み込まれ、抜け出せない煉獄へと落ちていくのだろう。

さて、ここで問いかけたい?資本主義は悪なのか?

答えは簡単だ。NOである。じゃあ何かといえば人がただただ愚かなだけなのである。

成功しなければならないと思うのも人、嫉妬するのも人、死を選ぶのも人。結局自分の意思で進んでいることに変わりはない。であるならばその結果をシステムの所為にするのは責任回避と同じだ。

嫌なら止めればいい。でもそれだと他人に迷惑が掛かるからというならばそれは他人だと割り切ればいい。それも嫌だというなら模索するしかない。今のままで幸せになれる方法を。

つまり、思考するということこそが資本主義を卒業することへの第一歩なのである。自分を見つめ直さない限り状況が如何に変わろうと結果は一緒。また不幸になるだけである。

後悔しない今を生きるためにやらなければいけないことは山ほどある。歩みを止めてはいけない。思考停止は死と同義である。

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2012.01.30


本文はここまでです。