定金伸治さんの『ジハード』。高校生の頃、通学の電車の中で食い入るように読んだ。黒い背表紙に宗教画のような表紙絵、史実の上に立つ多くの才、多くの英雄たちに心躍らされた。おかげで、世界史は苦手だったがイスラム史だけは楽しんで勉強できたものだ。
『ジハード』は、第三回十字軍遠征をイスラム陣営を主軸において描く、歴史ファンタジーだ。もとは集英社から刊行されていたものだが、星海社から完全版として再販されることとなった。完全版の名に反さず、集英社文庫版には無かった美麗な挿絵や、細かだが物語をより深めるための本文の修正が加えられている。当時のファンとしてはとても嬉しいことだし、また、初めて読む人もこの傑作歴史ファンタジーに魅了されるに違いない。そう思えるほど、この作品には愛が込められている。
例えば、主人公の一人・ヴァレリーが騎士・ラスカリスにイスラム陣営へ一緒に行こうと言えなかったと回想するシーン。星海社文庫版では、一人でイスラム陣営へ行くのは怖くて誰か一緒に来て欲しかったという、ヴァレリーの弱さを示すような思いが書き加えられている。ヴァレリーの魅力は、弱さだ。誰もがもつような恐れや悲しみを人一倍感じてしまうからこそ、読者はヴァレリーに思い入れを抱いてしまう。そんな、登場人物達の魅力をより深めるような修正が、各所に見受けられる。定金さんの作品愛がひしひしと感じられて、読者としては嬉しい事この上ない。
今後も、あのキャラはどんなデザインなのだろうとか、あの場面はどんな風に描かれるのだろうと、期待は尽きない『ジハード』。読んでる間はしばし高校生の頃に立ち返り、また、新しい発見に心を踊らせながら、ヴァレリー達の旅路をもう一度楽しみたいと思う。
『ジハード』は、第三回十字軍遠征をイスラム陣営を主軸において描く、歴史ファンタジーだ。もとは集英社から刊行されていたものだが、星海社から完全版として再販されることとなった。完全版の名に反さず、集英社文庫版には無かった美麗な挿絵や、細かだが物語をより深めるための本文の修正が加えられている。当時のファンとしてはとても嬉しいことだし、また、初めて読む人もこの傑作歴史ファンタジーに魅了されるに違いない。そう思えるほど、この作品には愛が込められている。
例えば、主人公の一人・ヴァレリーが騎士・ラスカリスにイスラム陣営へ一緒に行こうと言えなかったと回想するシーン。星海社文庫版では、一人でイスラム陣営へ行くのは怖くて誰か一緒に来て欲しかったという、ヴァレリーの弱さを示すような思いが書き加えられている。ヴァレリーの魅力は、弱さだ。誰もがもつような恐れや悲しみを人一倍感じてしまうからこそ、読者はヴァレリーに思い入れを抱いてしまう。そんな、登場人物達の魅力をより深めるような修正が、各所に見受けられる。定金さんの作品愛がひしひしと感じられて、読者としては嬉しい事この上ない。
今後も、あのキャラはどんなデザインなのだろうとか、あの場面はどんな風に描かれるのだろうと、期待は尽きない『ジハード』。読んでる間はしばし高校生の頃に立ち返り、また、新しい発見に心を踊らせながら、ヴァレリー達の旅路をもう一度楽しみたいと思う。