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読者レビュー

銀

星海大戦

SFを語る者達へ

レビュアー:AZ Adept

 SFはこうでなくっちゃと、そう思える物語だ。舞台は、広大かつ精緻に設計された宇宙。登場人物は、宇宙に似つかわしい大きな器をもつ者達。読者は、星の海に思いを馳せて、ただただ夢中に楽しむこよができる。
 私も、時間を忘れ、没頭して楽しむことができた。SFって、やっぱり面白いなあと思えた。だからこそ、あとがきには驚かされた。「かつてSFという物語ジャンルがありました」そんな文言から始まるあとがきには、著者のSFへの強い思いが込められていた。
 SFを過去形にしてしまったのは、SFを語る者だと著者は言う。「これはSFではない」「あなたは本当のSFファンではない」などと語る者が、SFから人を遠ざけた。それは、本当に存在した歴史なのだろう。私も、本当の作品、本当のファンといった言葉に踊らされてきた記憶が多くある。
 しかし、本来ならそんな言葉を気にする必要はないのだ。あとがきにもあるように、周りが何を言おうが気にせず、物語を楽しめばそれでいい。本当の、なんてわけの分からない定義なんて無視しよう。SFは、楽しむためにあるのだ。
 だから、この物語をレビューで語ることには、若干の躊躇があった。私のレビューを読むことで、誰かの楽しみを阻害することにならないだろうかと。星海大戦には、人類の宇宙進出、謎の地球外生命体、強い意志をもつ登場人物、超科学技術、宇宙戦争、陣営ごとの体制… といった想像を巡らせて楽しむ要素がたくさんある。どうか、SFの未来みたいな難しいことを考えながらこの作品を読まないでほしい。読んでいる間は、星の海につかって楽しんでほしい。そして、読み終わった後には、自分の感じた楽しさを伝えるために、存分に語ってほしいと思う。

2014.01.29

さくら
SFとミリタリーってなんだか共通する部分があると思いますの。どちらも手ばなしに「好き!」と主張しづらい部分がある事は否定できないですわ…。でも、だからといって!好きになることは誰にも否定する権利はない!難しい事は専門家に任せればよくってよ!私たちは自由なのですわー!
さやわか
姫のミリタリー嗜好、きたー!作品としてはジャンル性を超えようとしたものなので、このレビューもジャンル論を自覚的に超えようとしていて、そこが素晴らしいと思います。つまり作品の意図が的確に届いている。だからこそ、レビューを書くことについてこの書き手は戸惑うわけです。ひょっとして自分がこれを書くということは新たな読み手の感性を狭めることになっているのではないか?これはレビューを書く上で、実は素晴らしいテーマです。このレビューはそこに躊躇しながらなお突き進むのですが、それは一つの答えとして美しいと思いますぞ!ということで、僕はこのレビューに「銀」を授けたいと思います!

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