わたしたちが本を読むとき、まず目に入るのは「文字」だ。書体というのは、その「文字」の様式のことだ。だから、本を読むということは、書体を読むということでもある。だから「読書」なのだと。
もっとも、そんなことを言えば、物を知る人からは「中国では『書』というのは『本』という意味で、だから『読書』で『本を読む』なんだよ」と反論されてしまうだろう。だけど、そういう人にこそ、わたしは「本を読む人のための書体入門」を読むことをすすめたい。
著者は、普通の読者が見過ごしてしまいがちな書体の存在を指摘し、それがいかに読み心地に関わっているかを説いてみせる。たとえば、まるで血文字のような「淡古印」という書体。これはホラー漫画などに使われていて、恐怖をあおるのに効果的だとされている。そういう意味では、確かに「書体を読む」ことも「読書」なのではないかと納得させられてしまうのだ。
「デザインのノウハウを学ぶための入門書」ではないので、専門用語などは出てこない。ただし、先の「淡古印」をはじめ、「ドラゴンボール」「水曜どうでしょう」などで書体の具体例を示しているので、専門用語がなくともすんなり内容が入ってくる一冊。本を読むことが好きな人にはぜひとも読んでほしい。