「サエズリ図書館のワルツさん2」
A Book is a Book is a Book.
レビュアー:オペラに吠えろ。
つらいことがあったとき、本を読むといいらしい。
誰もが経験では知っていることだろうけど、海外の大学の研究でも同様の結果が出たそうだ。わたしは専門家ではないので多くの文字数を割くことは避けるが、読書は大脳を活性化させ、それが結果的にストレス軽減につながり、孤独感を薄めてくれるのだという。
本書「サエズリ図書館のワルツさん」は、そんな読書の効果を改めて教えてくれるシリーズだ。本書を読んでいる人が癒やされるのはもちろん、物語の中ではさまざまな立場の人が読書、ひいては本を通じて、心の傷や悩みを乗り越えていく姿が描かれる。
シリーズ2作目となる本書では、本が壊れたり汚れたりしてしまったときに本を直す人=図書修復家の話がメインになっている。図書修復家というのは現実にもある職業だが、本書の舞台になっている「紙の本が希少なものとして扱われている」近未来では、さらにその重要性が増している。紙の本がもう出版されていないため、現存する本が破けてしまったからといって簡単に買い直すわけにはいかないのだ。だから、本を“直す”。
人の心を癒やしてくれる存在である本は、人の手によって書かれ、また直される。それはつまり、本を介してではあるものの、人が人を癒やすということだろう。「サエズリ図書館のワルツさん」では、本によって人と人とがつながり、そのつながりによって人は安心感を得る。本書を読んだときに心が癒やされる気がするのは、作者が本に注ぐ、優しいまなざしを感じるからということもあるだろう。だがそれ以上に、まだ見ぬ誰かが、いつか自分とつながるかもしれない。そんな予感に満ちた物語だから、という気もする。