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レビュアー「ラム」のレビュー

銅

私のおわり

海のむこうがわ

レビュアー:ラム Adept

天霧君は電子海というネットゲームの創造主。
世界を見守る神様だ。

運命に逆らい流れ着いた天霧君の部屋でみた、死ぬ4日前の光景。

電子海を見守る天霧君が、どんなに幸せそうかサヨは知った。

あるいは天霧君のいない部屋を見守り、天霧君以外の人がいる部屋を見守った。


サヨは死んで、海をただよいいつか神様になる。

電子海における天霧君と同じ立場になる。

それはきっと、天霧君の部屋を見守った4日間の延長上にある。

天霧君のいる世界を見守るのだ。

だから、サヨは寂しくないのだと思った。

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2011.09.30

鉄

ダンガンロンパ/ゼロ

ドキドキがほしいなら

レビュアー:ラム Adept

このレビューは、ゲーム「ダンガンロンパ」のネタバレを含むかもしれません。
未プレイの方は流し読んでください。


もし、ゲームをプレイする予定がなく、「ダンガンロンパ/ゼロ」を読んで意味が分からないよ! ってなった方。安心してください、ゲームしたけど私もよく分かっていません。

嗚呼、でも何でしょうかこの高揚感!
分からないのにドキドキします。いえ、むしろ分からないからドキドキします。

あの白黒のクマ、可愛いですね、なんでしょうね?

未プレイの方は、どこがネタバレかも分からないと思うので詳しくは語りませんが。

ゼロの主人公は、記憶を維持できない女の子。
幼なじみの松田君のこと、松田君が好きだということだけは覚えているようです。
あと、ノートを常に持っています。

そして否応なく事件に巻き込まれていく訳なんですが。


「ダンガンロンパ/ゼロ」
ゲーム「ダンガンロンパ」の前日譚。
《希望ヶ峰学園史上最大最悪の事件》は起きた後。
それを探っていく話? のようです。

この小説が、ゲームとどう繋がるのか私には全然分かりません。
でも、ゲームをプレイするには圧倒的で致命的なネタバレがあるというのはすぐに分かりました。

小説を読んでゲームに興味を持たれた方、悪いことはいいません。

くれぐれもゲームのプレイ中は小説の内容を忘れてしまってください。約束ですよ?

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2011.09.30

銅

私のおわり

さぷらいず

レビュアー:ラム Adept

星海社の泉和良担当とはわたし合わないのかな、と思った。
また帯にイラって。
「せつない」って、先に言われたらテンション下がるー。

せつないのかー泣くのかなー、って。
読む前に言われると展開がわかってしまって楽しみが減る。
わたしはびっくりするのが好きなのだ。

なんて思いながらまぁ、28ページで涙腺がゆるくなって、号泣する準備はできていた。嘘、めっちゃこらえた。

サヨが死神船長の船の上でみた、小さいときに海でおぼれた夢が好きだ。
疲れてるお父さんに我がままを言って、海に来たけどお父さんは寝てしまって。
一緒に楽しみたかったのに、やっぱり休ませてあげるべきだったんだって、帰ろうとするんだけどゴムボートから落ちちゃって。
お父さんに買ってもらったゴムボート、流されちゃうって。
溺れてるのにゴムボートのことしか気にしてなくって、お父さんに怒られちゃうって。
お父さんは気付いて蒼白な顔でやって来て、
「ちゃんと戻ってきてくれて良かった」って。
ゴムボートを指さしてごめんなさいって泣くけど、お父さんはゴムボートのことなんて何も言わなくて。

泣いちゃうって。

今もちょっと、思い出すとうるってなっちゃう。自分の父親にはなんとも思わないのにフィクションの親子関係はどうしてこうも私の胸を打つのか。
嘘、お父さんが優しくて泣いたことある。

お父さんが好きだから一緒に遊びたいけど、お父さんが疲れてるから遊ぶのやめる。
天霧君が好きだけど、好きって言うと天霧君が困っちゃうから言えない。

自分の思いを伝えたいという気持ちと、天霧君の気持ち。
死ぬから伝えたいより死後で悲しむ天霧君を優先できるサヨの優しさが愛しい。

サヨは泣いてばっかいて、イラストは表紙しかないけど表紙だけでも十分サヨってる。
報われないまま終わっていたらせつないと思ったかもしれない。でも、ミーヨや死神船長に優しくしてもらってよかったね。素敵な話だったよと思ったよ。

そして後ろのあらすじを見て驚いた。
「せつなさ100%の星海社SF」

あれっ、これってSFだったの!?

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2011.09.08

銅

iKILL

読まなきゃわからない

レビュアー:ラム Adept

怖い話が嫌い。
だって怖いじゃん。
怖いとゾワゾワってなるし、主人公が怖い目にあうのも可哀想で嫌。
「iKILL」も、レビュー読んで怖い話だって思ってたんだけど、勢いで読んだらあれ? すっげー面白いよ?
結局どんな話か分かっていなかったので、冒頭からすごく引き込まれた。

だから誤解を恐れずに言う。「iKILL」はホラーではない。
ほんのちょっと怖いのも嫌な人は、まぁ怖いんだろうけど、怖くなるとこまででもちょこっとくらいは読めるよ。うん、いける。大丈夫大丈夫。

だって「iKILL」は面白い。
今まで読んでなかったことを即後悔したくらい。

確かに残酷な描写がリアルなのだけど、主人公の小田切さんは感情がフラットで、残虐さも、小田切さんの見ているものを後ろから見ている感じで、ちょっとだけ距離が遠いのだ。
登場人物が怖がっていないので、そんなに怖く感じない。

でもだからこそ、4章で急にあなたは、あなたは、と波のように連呼されることに恐怖を感じるけど、そこまで読んでもう怖いとか言ってられないし。
「iKILL」は、たとえば、酔った勢いでやってしまった失態を犯したとき、冷静になってそんなことをした自分が怖くなるお酒って怖いねっていう怖さ。それはホラーじゃなくて、自分への失望とかそういう怖さなのだ。
小説読んで自分に失望とかしたくないよね、でも、だから怖がりながらも読める。
怖い話だから……って読まないのはもったいないよ! 私みたいに!!

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2011.08.17


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