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読者レビュー

銅

私のおわり

さぷらいず

レビュアー:ラム Adept

星海社の泉和良担当とはわたし合わないのかな、と思った。
また帯にイラって。
「せつない」って、先に言われたらテンション下がるー。

せつないのかー泣くのかなー、って。
読む前に言われると展開がわかってしまって楽しみが減る。
わたしはびっくりするのが好きなのだ。

なんて思いながらまぁ、28ページで涙腺がゆるくなって、号泣する準備はできていた。嘘、めっちゃこらえた。

サヨが死神船長の船の上でみた、小さいときに海でおぼれた夢が好きだ。
疲れてるお父さんに我がままを言って、海に来たけどお父さんは寝てしまって。
一緒に楽しみたかったのに、やっぱり休ませてあげるべきだったんだって、帰ろうとするんだけどゴムボートから落ちちゃって。
お父さんに買ってもらったゴムボート、流されちゃうって。
溺れてるのにゴムボートのことしか気にしてなくって、お父さんに怒られちゃうって。
お父さんは気付いて蒼白な顔でやって来て、
「ちゃんと戻ってきてくれて良かった」って。
ゴムボートを指さしてごめんなさいって泣くけど、お父さんはゴムボートのことなんて何も言わなくて。

泣いちゃうって。

今もちょっと、思い出すとうるってなっちゃう。自分の父親にはなんとも思わないのにフィクションの親子関係はどうしてこうも私の胸を打つのか。
嘘、お父さんが優しくて泣いたことある。

お父さんが好きだから一緒に遊びたいけど、お父さんが疲れてるから遊ぶのやめる。
天霧君が好きだけど、好きって言うと天霧君が困っちゃうから言えない。

自分の思いを伝えたいという気持ちと、天霧君の気持ち。
死ぬから伝えたいより死後で悲しむ天霧君を優先できるサヨの優しさが愛しい。

サヨは泣いてばっかいて、イラストは表紙しかないけど表紙だけでも十分サヨってる。
報われないまま終わっていたらせつないと思ったかもしれない。でも、ミーヨや死神船長に優しくしてもらってよかったね。素敵な話だったよと思ったよ。

そして後ろのあらすじを見て驚いた。
「せつなさ100%の星海社SF」

あれっ、これってSFだったの!?

2011.09.08

のぞみ
ずっと、口調が、統一されていて、良いと思います。少し幼さみたいなのも感じましたわ! 一緒にお喋りしているような親近感も感じますね。
さやわか
無邪気そうに書きながら、「自分の泉和良」と編集者が付けたコピーの食い違いを不満げに語ってみせるという、わりとかわいらしい感じのレビューですね。気に入らないところを語るやり方としては考えられているなと思います。最後の部分も、思わず笑ってしまいましたぞ。こういう文体を選ぶと自分の感じたことだけをぐっと印象づけることができますな。独善的に感じる人もいるかもしれないですが、それはある程度わかって書いているものなので、僕は嫌いではないです。ただ、ラムさんはこれ以外にもレビューを送ってくださったのですが、ほかのものはその視野の狭さがどうも気になった。ラムさんにしかわからないと思いますが、たとえばもう一つ『私のおわり』について書かれたレビューで「電子海における天霧君と同じ立場になる」というのはものすごくいい指摘だったのですが、しかし「だからサヨは寂しくない」というのが、作品のどこから伝わってきているかがわからなかった。でも、文体のせいもあってそのへんは流されてしまいがち。そこは惜しかったです。短さを保つのに必要だったのかもしれませんが、そこを裏付けしておくとよりレビューとしての強度が増したように思います。いかがでしょうか? とまれ、こちらは「銅」といたします!

本文はここまでです。