ここから本文です。

レビュアー「カクラ・メロンソーダ」のレビュー

銅

うーさーのその日暮らし

紙の使い方

レビュアー:カクラ・メロンソーダ Adept

一般的に、ポストカードは葉書と同じ厚みがあり、表面だけにイラストがある作りです。たくさん集めると、かさばってしまい、本のページをめくるようにはいきません。
一般的に、イラスト集は本のサイズ自体が大きく、紙も良質なため、ページはゆっくりとめくる形になります。
この本はどちらとも逆の作りをしています。まず、絵は1ページ完結のポストカード型でありながらコミックとしての体裁になっております。だからページの両面に絵があります。そして、カラーイラスト集でありながら、紙は薄いため、普通の漫画のようにページをすいすいとめくって見進めることができます。
これはポストカード集めもイラスト集も好きな自分にはちょっとした衝撃でした。
コミックのようにパラパラめくれて、気軽にイラスト集が楽しめるんです。緻密な絵柄を必要としない、うーさーとりんちゃんのデザインをとても効果的に生かしている作りで、コレクター心をくすぐる素晴らしい書籍です。

「 紙の使い方」の続きを読む

2013.07.08

銅

怪談と踊ろう、そしてあなたは階段で踊る

怪談/計算問題

レビュアー:カクラ・メロンソーダ Adept

怪談と名の付く作品は、恐怖を煽る事を目的とするのが一般的です。しかし著者の作風には、はっきりと違った傾向があります。
それは、恐怖を煽ることが目的ではありますが、はっきりと謎解きという目的を作品に持たせていることです。
超常現象ではなく、人の手で引き起こされた謎なぞであることです。

主人公の友宏は男子高校生3人組の内の一人。気弱なところがありますが、なかなか頭の冴えた男の子です。残りの二人は言わずもがな脇役。
もう一人、田無美代子はある理由でイジメを受けることになる女の子。物語の中心となる、神経質な性格です。
最後に、優花さんは豪快であっけらかんとした、頭の冴える刑事で、今回友宏の一家に一時的に居候してきます。
この三人からどんな物語を想像するでしょうか。イジメの背景に潜む事件。謎解きを解決するために活躍する男子高校生…?
物語は中盤まで、この三人を中心に回っていきます。

本作を一度読むと「お骨様の呪い」に囚われた少女に対するイジメの背後に潜む「謎解き」を楽しむことができます
本作を二度読むと「謎解き」の背後に潜む「恐怖」を感じることができます。
そして三度読むと「計算問題」だと思っていた謎解きが、実は「呪い」に介入された物語だと疑心暗鬼になります。
小説という媒体は、一見繰り返し読むのに適しませんが、筆者は本という媒体の特性を活かし、読む度にヒントを見つけられる作品にしています。

「 怪談/計算問題」の続きを読む

2013.07.08

銅

うーさーのその日暮らし

バナナ

レビュアー:カクラ・メロンソーダ Adept

道端にバナナとこの本が落ちていたらどちらがバナナかわからなくなる。そう思わせずにはいられない位まっ黄色な表紙です。多少バナナの匂いもしました。

例えば子供の頃、アニメのキャラが実際には裏で声を当てている大人がそこにいることを知り、衝撃を受けた経験はないだろうか。信じていた理想の世界が現実に引き戻される瞬間。

かわいいうーさーやりんちゃんのイラストに、暴力や卑猥な表現が入るシュールさがよりキュートさを引き立てています。
私はまさにそこに引かれてこの本を買いました。
1ページ1ページがイラストとポエムで構成されており、ポストカードのような作りになっていて見ごたえ十分。満足度は高いです。ただ、唯一不満だったのはポエムを書いてるのが全部おじさんだと知ったことです。

「 バナナ」の続きを読む

2013.07.08

銅

怪談と踊ろう、そしてあなたは階段で踊る

突き刺さるシャベル

レビュアー:カクラ・メロンソーダ Adept

怪談と名打った本作は、二つのモノが鍵となり、物語を彩る。一つは「骨」もう一つは「田無美代子」という人物。
本作は、田無美代子の謎の飛び降り(怪我で済む)の謎を読み説くことを目的としている。主人公であり高校生の友宏の自問自答、飛び降りを目撃した佐藤理恵の言葉をヒントに謎を読み説く「ゲーム」として読むこともできる。
高校生3人組が賽銭欲しさにでっち上げた「お骨様の鈍い」は、次第に学校内で一人歩きし始め、肥大化し、遂には田無美代子の転落事故が発生する。
「ひぐらしのなく頃に」「うみねこのなく頃に」といった著者の代表作は、残酷な描写と、いつ恐怖が目の前に現れるかわからない展開に、恐怖から逃げるようにあっという間に読み進めざるを得ないテキストだった。
本作は残酷な描写を控え、作者の作品に通じる背後から忍び寄るような恐怖を楽しむことができる物語にまとまっている。
ただし、著者の得意とする「突然現れる恐怖」で読者を驚かす種はしっかり埋まっているので、気軽に読む際は念のため注意してほしい。

「 突き刺さるシャベル」の続きを読む

2013.07.08


本文はここまでです。