大塚英志氏の「ただ戦慄すればいい。」の帯通りに戦慄した。漫画はカラーページを除けば、色の付いているページは無い。それは当たり前なのだが、この作品程、”黒”しか似合うもののない作品は久しぶりだった。表題作の『幸福論』。唯、ただ黒い。笑みさえ黒い。誰しも持っているであろう負の部分を隠さない主人公・れおなの最後の笑顔は心からのモノだったのだろうだと思うのだが、正直とても同調出来るものではなかった。悪趣味なネット動画などで興奮を覚える辺りが、現代の世相を反映していて心底恐ろしい。自分もこの世界で生きているのだと思うと、本当に戦慄する。見たくはないが、目を背け続ける事もしてはいけないのではないかと強く感じさせられた。作者の方には、もっとリアルで尚且つ人間を抉る作品を描き続けてもらいたいと思った。
幸福論 西川聖蘭第一作品集
ただ戦慄してしまいました。
レビュアー:ゲッテル Novice