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レビュアー「yagi_pon」のレビュー

銅

星海社ラジオ騎士団

出版社のラジオだから

レビュアー:yagi_pon Novice

今まであったラジオ全8回の中では、
このラジオ騎士団5回目の古木スペシャルが、一番楽しめました。
なんでだろー、なんてことを考えてみますか。

個人的に今回が一番楽しめた要因はですね、
団長のレビューにあるんです。
団長のレビューは、同じパーソナリティーの古木さんの所属する
声優ユニットのデビュー曲に向けられたものでした。
古木さんは、自分たちのデビュー曲がかかるとは知らずに、
ドッキリで号泣してしまうのですが。
曲が流れたあとに、団長がデビュー曲へのレビューを読み上げていきます。
いやね、変な話このレビューってなくてもよいじゃないですか。
音源が流れているのだから、それを聴くのが一番わかりやすいわけで、
あえてレビューを聴く必要があるかといわれると、
必ずしもそうだとは思わないんですよ。
それでもそこにレビューを入れてくるのが、
元「レビュアー騎士団ラジオ出張版」だった面影もあり、
出版社のラジオとして言葉で表現することへのこだわりにも見えるし。

ふつうのラジオだったら、レビューなんてなくてもいい。
曲のよさは、曲から感じてもらえばいい。
曲が流れたあとに話すことは、その曲にまつわる話であって、
その曲の話でなくていい。
けれども、そうならないのがこのラジオらしさなのかなぁと。
音楽に言葉で立ち向かう感じがね。
まぁ音楽をかける機会なんてものは今後あまりないだろうけれど、
今後もいろいろなものに言葉で立ち向かってほしいですよね。
イラストレーターさんの絵の魅力を、
言葉で語ったりとかしてほしいですよね。

どうです?ラジオのゲストを、
「では、本日のゲストは、
『エトランゼのすべて』のイラストでもおなじみの庭さんです」
みたいな紹介ではなく、
「では、本日のゲストは、
 しなやかさと暖かさを併せ持ち、独特のタッチで読者を魅了する、
 イラストレーターの庭さんです」
という巻末みたいな紹介とかは。
なんかこう、言葉でそこまで言われると、
実際に絵を見たくなるじゃないですか。
まぁこれはちょっと極端な提案でしたけど。

出版社がやってるラジオだからこそ、
よい曲のどこがどうよいのか、
よい本のどこがどうよいのか、
よい絵のどこがどうよいのか、
そんな表現がされていてもいいんじゃないですかね。
よい感じや、よい雰囲気で通じるものを、
あえて掘り下げてみる、あえて言葉で表現しようとする、
そんなラジオがあってもいいじゃないですか。

そんなことを、音源かけてるのにあえて
言葉でよさを語るさやわかさんの声を聴きながら思いましたとさ。

最前線で『星海社ラジオ騎士団』を聴く

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2012.05.18

銅

『二十四歳の地図』

小説家・小柳粒男に期待

レビュアー:yagi_pon Novice

小柳粒男という人物を、私は最近になって初めて知った。公開企画会議というニコニコ生放送で、作家の渡辺浩弐さんと、編集者の太田克史がやっている番組である。どうやら北海道在住で作家だという彼。私はそれまで名前も知らなかった彼が、なにやら身一つで上京してきたらしい。そして、今はなんとか寝床と仕事を見つけて、新聞配達をしているらしい。
なんともおもしろい話だ。友人に「実は俺、北海道から身一つで上京して、住み込みで新聞配達やってんだ」と言われたら、笑って「冗談だろ」と突っ込むレベルである。しかし、どうやら本当の話のようだ。
しかしだ。失礼な話、どうにも私は彼の本を読んでみたい気にはならない。彼を応援したい気持ちはある。そして、別にハードボイルドが苦手なわけではない。Amazonのレビューによくない評価が並んでいるからでもない。ただ単純に、今の彼の状況そのものがそこらへんの小説なんかよりもよっぽどおもしろそうに思えるからだ。
上京男・小柳粒男の日常に興味はあるけれども、小説家・小柳粒男の作品に惹かれるまでには至っていない。それは、現時点では、彼の置かれた状況がおもしろいのであって、彼の作品がおもしろいのかということとはまったく別問題だからだ。

ただまぁ、だからと言って小説家・小柳粒男に期待していないわけではない。
個人的な話になってしまうが、私は6歳のときからずっと、彼が日夜新聞を配達している場所に程近い場所に住んでいる。そう、渋谷だ。おそらく一番多く訪れたことのある場所だろう。そんな私にとっては、渋谷の夜の騒々しさも、明け方の静けさも染み付いてしまっている景色になってしまっていると言ってもいい。
そんな渋谷を見て、北海道からきた上京男がどう思うかということは、私にとって非常に気になるところである。ましてや彼は小説家だ。この街を、この街の景色を、いったいどう表現してくれるのか、私はそこに日常的にいる人間としてとても期待している。そして同時に、上京男・小柳粒男ではなく、小説家・小柳粒男に惹かれるようなものを書いてくれることにも期待しているのだ。


『二十四歳の地図』を読んで、今はまだ、私は「この状況おもしろいなー」と思っている段階です。しかし、それがいずれは「この人おもしろいなー」と思うようになり、そののちには「この人の本おもしろいなー」と思えるようになればいいなと、そんな期待をしています。

最前線で『渋谷/道玄坂で新聞を配る小説家・小柳粒男 二十四歳の地図』を読む

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2012.05.18

銅

『竹画廊画集 2010-2011』

少し変な形の本の話。

レビュアー:yagi_pon Novice

騎士団の褒賞で、『竹画廊画集 2010-2011』を頂いた。
灰色の封筒をあけると、変な形の本が入っていた。
数年前に出された、横幅が狭いキャンパスノートみたいだ。
シュリンクをとって、ぱらぱらとめくっていく。
かわいいキャラクターに見惚れ、色使いに圧倒され、
足や腰のラインに魅了され、眼に引き込まれる。
一通り見終わって、本棚にしまおうとして気がつく。
さて、この本をどこにしまおうか。
明らかに他の本とは形が違う。
無駄に几帳面な私の本棚は、
サイズごとにしまう場所が違うため、困ってしまう。
とりあえず、と唯一サイズ分けされていない、
積読本たちが並ぶ場所へと入れておくことにする。

それから一ヶ月以上たった。
いまだに『竹画廊画集』は積読ゾーンに居座り続けている。
それは、本棚には入れられないからだ。
困るなー、なんて思いつつもちょくちょく手に取り、眺める。
変な形のせいで本棚にはしまえないけれど、
変な形のおかげでずっと手元においている。
最近はよく、お気に入りの桜前線のイラストを見ている。
とくに何か目的があるわけでもなく、なんとなく眺めたあと、
『竹画廊画集』は、積読ゾーン改めよく手に取るゾーンへと帰っていく。

おわり

最前線で『星海社竹画廊』を見る

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2012.04.23


本文はここまでです。