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レビュアー「 tyoro」のレビュー

鉄

Fate/Zero 1 第四次聖杯戦争秘話

Fateをまだ知らぬあなたへ

レビュアー: tyoro

レビュアー騎士団を見ている人なら、作品に触れた事がなくても『Fate』という名前に見覚えはあるんじゃなかろうか。
僕は学生の時の友人が、ゲームにハマっていたのをぼんやり憶えている。

当時の僕はとても天邪鬼な性格で、友人に薦められたもののついぞ手にする事は無かったのだけど、それ以来何年も『Fate』の名を目にする機会があって気になってはいた。
でも今更、ゲームをやるだけの時間はとれないし...と、そこで出逢ったのがFate/zeroだった。


この本はzeroの名の通りFateより過去の独立した時間の物語であり、単体で楽しめるという友人の薦めも受けて読んでみる事にした。


プロローグを読みはじめて、それぞれ背負うものを持つ、各登場人物達が現れる。
そして物語の軸となり、彼らが死力を尽くして戦う事になるであろう聖杯戦争について語られていく。

近代ものでありながら中世の剣と魔法の世界のような空気を持つ独特な世界感。
とても荘厳で重い物語だな、と序章を読みおえての感想はそんな所だった。
そして1章を読みはじめる。















えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!


けっこう雰囲気が変わるのでビックリする。
この驚きは是非手にとって確認してもらいたい。




聖杯戦争では7つのペアが戦うという性質上、物語の登場人物はかなり多い。
その為この1巻では直接的な戦闘はほとんど行われないし、世界観や人物紹介を軸にしながらお互いを探っていく様が描かれている。

では戦端の開かれる次巻まで、耐えて読まねばならないのかというとそうではない。
さっき書いた驚きものそうだけど、物語の導入にしては出来すぎているくらいに起伏に富んでいる。
この1巻はFate/zeroというシリーズがどんな物語になっていくのかを読者に期待させるだけの面白さを持っている。
そしてFate/zeroというシリーズは、Fateという作品に興味を持たせるだけの強い引力を持っている。
そう僕は確信する。



最後に読みおわって疑問に思った事がある。
この折り返しに書かれている肌の青い女性は誰だろう?

この作品を通しての難点として、キャラクターの容姿に対する言及が極めて少ないというのがある。

話しの性質上、本筋に関わってくる登場人物は非常に多い。
その上で説明的にならないようにという事を考えると仕方がないのかもしれない。
だが描かれているキャラクターまで誰だか分からないのは少し残念である。

これがシリーズ初見読者の壁かなぁと思ったが、そこは心配しなくていい。
そんな小説から入った読者の為に最前線には最適なページがある。

ここだ『Fate/Zero 1 第四次聖杯戦争秘話(link:http://sai-zen-sen.jp/sa/fate-zero/about/vol01.html)』

シリーズ1冊毎に特設ページがあり、その巻の段階での登場人物についてはキャラクターイラストが掲載されているのだ。
ページ自体は出来れば本編読了後に読んで欲しい所だが、これがあればキャラクターのビジュアルも補完してくれるので完璧である。


さぁ、もう君がFate/zeroを読まない理由はない。

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2011.06.17

金

エレGY

僕にかかっていた魔法は解けてない

レビュアー: tyoro

最初に書いておくけど、このレビューに共感できる人は少ないかもしれない。


この小説は、悩める自称フリーウェアゲーム作家が出会ったファンの少女との恋愛を描いた私小説風の小説。
完全なノンフィクションではないようだけど、7割くらいは実話 とのこと。


さて、何故共感できないか、という点を説明する為にちょっとだけ自分の事を書く。

僕はアンディーメンテというフリーウェアを制作・配布してるサイト、そしてそのゲームの作者であるじすさんのファンだった。

10年以上前、まだ僕が高校生だった頃に『ミサ』というゲームをプレイしてからアンディーメンテの世界の虜になって、既作を全て遊び新作が出る度に楽しんでいた。
サイトで販売されてるCDも何度か購入した事もあって、今でもiPodにいれて持ち歩いてる。

そう僕も『ジスカルドの魔法』にかかったファンの一人だった。

もし「作者が天才だ」とファンに思わせる事ができれば、どんな未完成な物を発表しても、ファンにはそれが名作に見えるだろう。――(中略)―― これが「ジスカルドの魔法」だ。
(CHAPTER1 9『ジスカルドの魔法』から)



この小説を最初に目にしたのは、3年も前に発刊された『パンドラ Vol.1 SIDE-B』という人を殴り殺せそうなボリュームの雑誌だった。
けど、その時は魔法が解けるのが怖くて冒頭を読んだ所でページをめくる手を止めてしまった。
ファンでありながら読めない、読まないっていうのは「それはほんとうにファンなのか?」と言われてしまえば閉口するしかないのだけど、
でも、そういうファン心理が存在するって事は、多分この小説を読んでくれれば(主人公との立場は逆になるが)理解してもらえると思う。



作中で描かれるのはファンによって神格化された天才ジスカルドではなく、作りあげてしまったキャラクターとのギャップに悩む、しがない(失礼><)フリーゲーム作家の泉和良。
その実態は僕みたいなファンの目からじゃなくても、けっこう悲惨なものだと思う。

そんな主人公が出会った"ジスカルド"のファンである少女 エレGY。
光に満ちた彼女に惹かれながらも、彼女にかかった『ジスカルドの魔法』が解けるのを恐れる主人公。

でもエレGYは、彼女はジスカルドというキャラクターも全てをひっくるめて泉和良という人間に向きあっていた。


この名作を手元に置きながら、3年間読む事が出来なかった自分を情けなく思う……。
(文庫化してくれてありがとう!星海社!!!

とても切ない、心に響く恋愛小説なので、是非沢山の人に読んでほしい。
そしてアンディーメンテのゲームにも触れてほしいな、と思う。


読み終わった後、かつての思いが蘇えってきた。
じすさんに憧れフリーゲーム作家を目指していた頃。
いつしかアーケードのゲーム制作に携わって、最終的に別業界のエンジニアになってしまった今。
でも、この本を読んで失ってしまった情熱を取り戻し、そして何より『勇気』が貰えた。

やりたいと思えるなら今でも遅くない。

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2011.05.09


本文はここまでです。