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レビュアー「enoki」のレビュー

銅

星海社ラジオ騎士団

星海社ラジオ“騎士団”

レビュアー:enoki Novice

『星海社ラジオ騎士団』。ウェブサイト『最前線』のコンテンツ『星海社レビュアー騎士団』の面々がおくる隔週火曜更新のネットラジオ。

 冬に放送が始まり、テコ入れが入りつつも今まで番組は続いてきました。僕自身『レビュアー騎士団』のほうに強く興味をひかれていたため、喜々としてこの番組を聞き始めまたのです。
 しかし実際のところ、僕はこの『ラジオ騎士団』を初回から数えて三回の放送を聞いたあと切ってしまった、すなわち聞くのを止めてしまったです。理由は至極簡単で、単に面白くなかったからです。

 まず第一に、パーソナリティ間の空気がよくなかったです。噛み合っていなかった、というのが正しいのかもしれませんね。「平林さんとさやわかさんはテンションがずっと低く、古木さんがそれをどうにか盛り上げようとしている。また年代の違いからもパーソナリティ間に大きな溝がある」――そのように僕は感じてしまったのです。もちろん緊張していたこともあるでしょう。しかし、その空気は僕が聞いた三回では一向に改善されなかったのです。話の噛み合わないパーソナリティが贈るラジオを誰が聞きたいと思うのでしょうか。

 第二に、各コーナーの質が低いです。元である『星海社レビュアー騎士団』に引っかけたいのはわかります。しかしゲストコーナー以外の三つのコーナーが醸し出す、溢れんばかりの一見さんお断りの香りはなんなのでしょう。『レビュアー騎士団攻略法』に疑問を送るのはレビューを書いたことがある人に限られてくるでしょうし、『編集者に聞きたい』ことと言われても少し考えを巡らせればラジオにメールを送ってでも聞きたいことは限られるでしょう。付け加えて『レビュアー騎士団攻略法』でのさやわかさんの回答はざっくりしすぎていてそこまで参考にならなかったです。そして、最後の救いに見えた『つけよう!キャッチコピー!!』にメールを送ったリスナーを待っているのは予想をはるかに越えるガッチガチの講評です。最前線の動向に注目していて聞きに来た人はともかく、初めて聞いた人がもう一度聞きたい、メールを送って読んでもらいたいと思うでしょうか。もちろん、先駆けの一つである『うぇぶえらじ@電撃文庫』のように『最前線』のサイト上にのみアップされるのならば問題はなかったのです。しかし、このラジオは響ラジオステーションでも配信されているのです。この矛盾はいかんともしがたいですね。

 ここに述べた二つの理由で、僕は『星海社ラジオ騎士団』の視聴を止めました。

 ――それから春が来て、ふとした気紛れで久しぶりに『星海社ラジオ騎士団』を聞いてみようと思いました。何のことはない、単なる暇つぶしのつもりでした。

 そして、聞き始めて五分。暇つぶしに聞き始めたにも関わらず、そこには顔に笑みを浮かべる自分がいたのです。そう、数か月ぶりに聞いた『ラジオ騎士団』は面白かったのです。

 上で挙げた点の一つ目である、パーソナリティ間の噛み合いの悪さが驚くほど改善されていたのが最も印象的でした。全体のテンションが上がったのもそうだが、三人のキャラクターとその関係が非常にわかりやすく、簡潔になっていたのです。
 視聴者目線に立ち、少しとんちんかんな質問を繰り返すおバカキャラの古木さん。
 番組中でいろんなところにネタを撒いたり話題を発展させたり、古木さんをいじったりする平林さん。
 話題の内容を深めたり、古木さんをいじったりするさやわかさん。
 これは回を重ねるごとに自然にポジションの住み分けが進んでいったのだと思われますが、とはいえパーソナリティ間で話が噛み合い、“ちゃんと聞ける”までになったのは大きな進歩でしょう。実際、この進歩のおかげで各コーナーもメールの内容により深く入っていけるようになり、僕は楽しく聞くことができたのです。

 もちろん、この『ラジオ騎士団』にはまだまだ問題が多くあります。そもそもまだ“聞けるようになった”段階であり、上記二番目の問題は一向に解決へ向かう気配はありません。平林さんはtwitterにて意外に再生数があると呟いており、もしかしたらこのままの体制を望む声もあるのかもしれません。

 しかし、この『星海社ラジオ騎士団』は『星海社ラジオ騎士団』の、『最前線』のコンテンツです。変化しない、自らを更新していかないコンテンツが果たして最前線に立っているのでしょうか。立つことが出来るのでしょうか。僕はそうは思いません。そもそもまだウェブラジオの最前線に『星海社ラジオ騎士団』という番組は立っていません。彼らはようやくウェブラジオという戦場に足を踏み入れたInitiateです。名の通り、『星海社ラジオ“騎士団”』には是非ウェブラジオ界のLordを目指してほしいと思います。

最前線で『星海社ラジオ騎士団』を聴く

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2012.06.08

銀

ひぐらしのなく頃に

『ひぐらし』はグロいから嫌い

レビュアー:enoki Novice

僕は『ひぐらしのなく頃に』が嫌いだ。中学校時、友人の家で漫画『鬼隠し編』を開いて、閉じた。
 嫌いな理由は単純明快、やたらとグロいからだ。
 僕はグロが嫌いなのではない。意味のないグロさが嫌いなのだ。物語の構成上など必要な効果を狙って書かれたグロならばむしろ賞賛をもって受け入れる。
 しかし、中学校時の僕には『ひぐらしのなく頃に』は受け入れられなかった。漫画版だけであったが、その時刊行されていたものにはもちろん最後まで目を通した。最後まで読み終わってさえ、そのグロさに、理由を認められなかったのである。

それから数年後、僕は星海社ウェブサイト最前線にて、おかしなものを見つけた。

 『はるかぜのふく頃に』なる対談企画らしい。内容はというと、『ひぐらし』の作者竜騎士07と、かの泣く演技で有名なはるかぜちゃんが、対談した、その様子が載せられているのだった。
 僕は首をひねった。何が起きればこの二人が対談するなんてことになるのか。
 『ひぐらし』は嫌いだ。興味なんて毛ほどもない。……しかし、気になる。この妙なマッチング、予想に反して気弱そうな竜騎士07の顔、はるかぜちゃんのネコミミメイド。どうにも気がひかれる。
 結論をいえば、僕は好奇心に負け、おとなしくサイトを開いたのだった。


 対談の内容について詳しく書くつもりはない。ただ、僕にとっては非常に有意義な内容であったことは記しておきたい。
 僕は『ひぐらし』が不必要に多いグロがあるから嫌いだ、と上に記した。星海社『ひぐらし』特設ページのスペシャル欄にある竜騎士07の

「『ひぐらしのなく頃に』という物語は、不気味なイメージが有名になってしまい、一般的には「怖い」作品であるとのご評価をいただいています。」

というメッセージからも『ひぐらし』がそのグロさ、怖さから一部または多くの人に敬遠されているだろう事が覗える。アニメの放送中止はそれを如実に表しているだろう。
 僕は、そういう人にこそ、この対談を見てもらいたい。当然、本当なら作品をよく読んで、理解してもらうのがいい。けれどそれでも分からなかった僕のような人にこそ、見てもらいたいのだ。
 この対談では、『ひぐらし』におけるグロさの狙いがしっかりと言われている。「グロいから嫌いだ」、この理由に対する否定が述べられているのだ。ディスコミュニケーションのもたらす悲劇――『ひぐらし』の必須要素としてグロはあるのだ、と。


 はるかぜちゃんと竜騎士07の対談は、僕に『ひぐらしのなく頃に』の読み方を教えてくれた。それは作者から提示されるという読者にとって最も恥ずべき形ではあったが、一大ムーブメントを巻き起こした作品を理解できるのだから、文句は言えない。

 僕は『ひぐらし』が嫌い、だった。だからこそ、僕と同じく蒙昧な『ひぐらし』嫌いの読者は、このスペシャルな対談を見てみてほしい。ここから始まる一歩というものがあってもいいだろう? 


 大丈夫だ、そのグロさには理由がある。

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2011.09.30


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