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読者レビュー

銅

サエズリ図書館のワルツさん

花を探しに行きませんか?

レビュアー:jakigan bla Novice

「だれかが、なん百万もの星のどれかに咲いている、たった一輪の花が好きだったら、その人は、そのたくさんの星をながめるだけで、しあわせになれるんだ。」―星の王子さま―
 さえずり町という名の、のどかな街の素敵な図書館にも、幾つもの「星」があって、そのどれかに咲く「花」を探しに、今日もいろんなお客さんが訪れます。お客さんの好きな花の色や形、咲いている場所や季節はまちまちですから、やみくもに探しても迷うばかり。でも大丈夫。素敵な図書館には、そこに似合いのとびきり素敵な「司書」さんがいるのです。ここ、サエズリ図書館の全ての星=本を統べる人、それが「ワルツさん」です。
 図書館は映画みたいに、戦争をする所ではありませんが、残念ながら、戦争によって失われてしまう所ではあります。過去には、蔵書70万巻(当時の本は巻物)を誇ったアレクサンドリア図書館が、異教徒による攻撃によって喪失しました。そしてワルツさんの生きる「未来」では、身の丈に合わぬ大量破壊兵器を手にした人間の引き起こした「三十六時間の戦争」によって、世界中のありとあらゆる図書館が喪失しました。この戦争によって戦災孤児となった彼女を救ったのが「パパ」であり、分身である「本」でした。だから彼女は時折パパの形見の煙管を燻らし、全身全霊を込めて本を愛し、守るのです。USBメモリ一つに置き換えられ、PCで瞬時に、自在に取り出せるものなんて、「情報」であって「本」じゃない。それぞれの本の中に、それぞれの花がある。本の中には人生がある。だから擦り減ったり、ちょっぴり折れちゃったりする。本の中には命がある。だからそれぞれの固さや重さを感じる。そして、本の中には心がある。だから愛おしく抱きしめられる。本は内容だけではなく、本それ自体に価値がある。ワルツさんはきっと、そう考えているのでしょう。「書物は一冊一冊が一つの世界である」と、かつてワーズワースが言ったように。
 さて、あなたの好きな「花」も、きっとサエズリ図書館の「星」のどれかに咲いているはずですよ。とっておきの紅茶でも飲みながら、ちょっと気の利いた音楽でも聴きながら、探しに出掛けてみてはいかがですか?いつでもワルツさんがご案内します。そして、「やわらかで若々しい、けれど落ち着きのある笑顔」を見せながら、あなたにこう言うのです。「それでは、よい読書を」と…。

2013.07.08

さくら
私にとって「星の王子さま」は花なのですよっ♪好きな作品とリンクさせて頂いたレビューで嬉しいです。これからも新たに花を見つけるべく、星たちを眺めて行きたいです。
さやわか
物語の筋を丁寧に解説しようという姿勢は好感が持てます。「です・ます」体の文章とも相まって、書き手の細やかさを感じさせますね。それはもちろん、「サエズリ図書館のワルツさん」という作品のムードに触発されたところがあるのではないかと思います。作品に寄り添う態度、いいですね!「銅」にいたしました。書き手自身の気持ちはあらすじの中に、ごくさりげなく書かれていて、それはそれで控えめな良さがあるのですが、読む人によってはあらすじに終始したレビューと感じてしまうかなと思いました。そういう人は、このあらすじが何のためにあるのかピンと来なくなってしまいがちです。もう少し、書き手自身の主張をはっきりと入れながら構成してみると「銀」を目指せるようになってくるかなと思います!

本文はここまでです。