泉和良『おやすみ、ムートン』
青蒼なる盛装
レビュアー:ラム、ユキムラ
日本で出版される書籍の多くにはカバーがついている。一部のソフトカバーや雑誌など以外、それらドレスコードを当然のようにまとっているのだ。
先日、ある出版社は3・11ののちに書籍に帯をつけることをやめた、という新聞記事を読んだ。
――帯とは、一体いかな存在か?
読者候補の誰かの目に留まるように、訴求効果を促すアクセサリーなのか。ゆえに表紙の一部を隠してまで、余分の一枚を見せつけてくるのか。
表紙にはない言葉の刃で、相手に興味を刻み付ける算段なのか。
そんなことをつらつら考えていたときに書店で出会ったのが、この本だ。
鮮やかな蒼をした帯が、平積みされた一角でひどく映えた。
其の帯の一文は、ある意味、「言葉」ですらない。吹き出しの中には、魂のカケラが見えた。常ならぬ表記、今まさに言葉になりゆく過程のような、未完成ゆえの尊さが垣間見えた気がした。
大仰な言い方かもしれないけれど、「帯をまとった本」の状態が、ひとつの芸術に見えたのだ。
ゆえに。
私はこの本を書店で見つけてもらいたい。
数多の、溢れる程の数の中から、この本の実物を双眸で味わってほしい。
過剰なまでの多彩な本たちにうずもれることなく歴然とした蒼が、己が存在を殊更に主張しているから。
――宇宙の蒼を凝縮したような帯をまとった、この美しくも儚い物語に。
きっと、貴方も魅せられる。
先日、ある出版社は3・11ののちに書籍に帯をつけることをやめた、という新聞記事を読んだ。
――帯とは、一体いかな存在か?
読者候補の誰かの目に留まるように、訴求効果を促すアクセサリーなのか。ゆえに表紙の一部を隠してまで、余分の一枚を見せつけてくるのか。
表紙にはない言葉の刃で、相手に興味を刻み付ける算段なのか。
そんなことをつらつら考えていたときに書店で出会ったのが、この本だ。
鮮やかな蒼をした帯が、平積みされた一角でひどく映えた。
其の帯の一文は、ある意味、「言葉」ですらない。吹き出しの中には、魂のカケラが見えた。常ならぬ表記、今まさに言葉になりゆく過程のような、未完成ゆえの尊さが垣間見えた気がした。
大仰な言い方かもしれないけれど、「帯をまとった本」の状態が、ひとつの芸術に見えたのだ。
ゆえに。
私はこの本を書店で見つけてもらいたい。
数多の、溢れる程の数の中から、この本の実物を双眸で味わってほしい。
過剰なまでの多彩な本たちにうずもれることなく歴然とした蒼が、己が存在を殊更に主張しているから。
――宇宙の蒼を凝縮したような帯をまとった、この美しくも儚い物語に。
きっと、貴方も魅せられる。