コミック版マージナル・オペレーション
キムラダイスケの乾坤“一滴”
レビュアー:Thunderbolt侍
「マージナル・オペレーション」は、作家・芝村裕吏の作品である。
おそらくは(作中で明記されていないが)彼がライフワークとする「無名世界観」の一部であり、そのため小説で描かれていない部分も含めて、芝村色に染め上げられている。
この春、その「マージナル・オペレーション」がコミカライズされた。
なお、「星海社FICTIONS」作品が社外媒体で連載漫画化されるのはこれが初めて。活字であるからこその魅力を追求している同レーベルならではの現象なのだが(芝村裕利もアフタヌーン7月号で「執筆するにあたって、ゲームや漫画にできない作品を書いたつもりだった」と述べている)、これはいまどき少々意外。
で、正直なところ、そういう作品であるため、コミカライズには不安があった。
コミカライズを担当するのはこれが初連載という若手漫画家キムラダイスケ。
掲載誌は「月刊アフタヌーン」。5月25日発売の7月号に巻頭カラーでスタートした。
結論を言う。
ファンとして満足できた。この先に期待できた。
原作を忠実に再現しようとしているからではない。コミックとして、独立して面白い作品にしようとしている点に好感を持ったのだ。原作を少しでもいじると「原作○○○」と言われてしまうこの世の中で、それでも自分なりの解釈を加えようという姿勢に好感を持ったのだ。
例えば、第1話では、小説の冒頭部分でしかない「TOKOで、何も持ち合わせていなかった、あの頃」のアラタの描写に数十ページも費やしている。
原作のアラタは、その当時の自分を冷静に客観視できるほど、本当に「何も持ち合わせていなかった」。
しかしコミック版のアラタにはきちんと友人がいた。
しかも、けっこう良いヤツらだった。
これには驚かされた。
原作のアラタは「年相応の焦り」から外資系民間軍事会社の門を叩く。
しかし、コミック版のアラタはもう少し捨て鉢だ。
「まぁ…いいか…」「僕は…こんなもんだ…」。
友人がいたからこその「僕は」という諦め。
この小さな絶望をあえて描いた意図がとても気になる。
それこそが、とてつもなく濃く、重い“芝村色”に、キムラダイスケという新人作家が落とした、“キムラ色”なのではないか。
一滴、一滴、また一滴……。
おそらく、ストーリーの骨子は最後まで変わらないはずだ。しかし、きっとコミック版は違う物語になる。そこを面白いと思う。そこに期待したい。
コミック版「マージナル・オペレーション」が漫画家・キムラダイスケの作品になりますように。
そうして生まれた2つの「マージナル・オペレーション」を完結後、改めて読み合わせたときに生まれる不思議な立体感を味わえますように。
そうそう、もう1つの“キムラ色”について、少しだけ。
この人はきっと、女の子を描くのが大好きな人だ。
冒頭巻頭カラーにジブリール(原作にない)、朝の通勤ラッシュに女子高生(原作にない)、民間軍事会社の面談で巨乳金髪職員(原作にない)、訓練キャンプの通訳が巨乳褐色肌職員(原作にない)、そして最初のブリーフィングで一足早くソフィア登場(原作にない)。
……いろいろ期待したい。
おそらくは(作中で明記されていないが)彼がライフワークとする「無名世界観」の一部であり、そのため小説で描かれていない部分も含めて、芝村色に染め上げられている。
この春、その「マージナル・オペレーション」がコミカライズされた。
なお、「星海社FICTIONS」作品が社外媒体で連載漫画化されるのはこれが初めて。活字であるからこその魅力を追求している同レーベルならではの現象なのだが(芝村裕利もアフタヌーン7月号で「執筆するにあたって、ゲームや漫画にできない作品を書いたつもりだった」と述べている)、これはいまどき少々意外。
で、正直なところ、そういう作品であるため、コミカライズには不安があった。
コミカライズを担当するのはこれが初連載という若手漫画家キムラダイスケ。
掲載誌は「月刊アフタヌーン」。5月25日発売の7月号に巻頭カラーでスタートした。
結論を言う。
ファンとして満足できた。この先に期待できた。
原作を忠実に再現しようとしているからではない。コミックとして、独立して面白い作品にしようとしている点に好感を持ったのだ。原作を少しでもいじると「原作○○○」と言われてしまうこの世の中で、それでも自分なりの解釈を加えようという姿勢に好感を持ったのだ。
例えば、第1話では、小説の冒頭部分でしかない「TOKOで、何も持ち合わせていなかった、あの頃」のアラタの描写に数十ページも費やしている。
原作のアラタは、その当時の自分を冷静に客観視できるほど、本当に「何も持ち合わせていなかった」。
しかしコミック版のアラタにはきちんと友人がいた。
しかも、けっこう良いヤツらだった。
これには驚かされた。
原作のアラタは「年相応の焦り」から外資系民間軍事会社の門を叩く。
しかし、コミック版のアラタはもう少し捨て鉢だ。
「まぁ…いいか…」「僕は…こんなもんだ…」。
友人がいたからこその「僕は」という諦め。
この小さな絶望をあえて描いた意図がとても気になる。
それこそが、とてつもなく濃く、重い“芝村色”に、キムラダイスケという新人作家が落とした、“キムラ色”なのではないか。
一滴、一滴、また一滴……。
おそらく、ストーリーの骨子は最後まで変わらないはずだ。しかし、きっとコミック版は違う物語になる。そこを面白いと思う。そこに期待したい。
コミック版「マージナル・オペレーション」が漫画家・キムラダイスケの作品になりますように。
そうして生まれた2つの「マージナル・オペレーション」を完結後、改めて読み合わせたときに生まれる不思議な立体感を味わえますように。
そうそう、もう1つの“キムラ色”について、少しだけ。
この人はきっと、女の子を描くのが大好きな人だ。
冒頭巻頭カラーにジブリール(原作にない)、朝の通勤ラッシュに女子高生(原作にない)、民間軍事会社の面談で巨乳金髪職員(原作にない)、訓練キャンプの通訳が巨乳褐色肌職員(原作にない)、そして最初のブリーフィングで一足早くソフィア登場(原作にない)。
……いろいろ期待したい。