サエズリ図書館のワルツさん
触れられるということ
レビュアー:カクラ・メロンソーダ
電子書籍と紙の本の違いは、物語という意味では全く差がないです。電子書籍に否定的な意見はよく聞きますが、本の本質は物語なのだから、どちらでも良いということになりそうですが、じゃあ何故紙がいいのだろう?と思うと『触れられる』ということしかないと思います。この物語りは多分10〜30年後位の日本の、ある図書館の話なのですが、教科書が電子書籍子化していて、子供達が紙の本を珍しがっています。紙の本を未だに大切にしている主人公の割津さん(司書・眼鏡っ娘)、上司に怒られてばかりでマイナス思考な上緒さん(20台前半OL)、古藤さん(ジャージ眼鏡っ子人妻)など、ポイントを抑えた登場人物は、キャラ立ちし過ぎることなく、物語の本筋を優しく飾ってくれています。触れられるということは多分、それを読んだ頃に自分は何をして過ごしていたか、どんな事が好きだったか、そんな記憶も強く紐づくんじゃないでしょうか。だから、きっと紙がなくなることはないんだろうな、と気付かせてくれる物語です。