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読者レビュー

銅

『ワニ』

ワニ、というよりはゲロ

レビュアー:やぎぽん Novice

タイトルからしてすでにアレな感じで、桑原さんごめんなさい。嘔吐嘔吐言ってごめんなさい。いや!でも!それだけじゃないんですよこの本。

さて本題。本作は、いろいろなものが垂れ流しの物語。主に吐瀉物。同じ著者の前作『夜跳ぶジャンクガール』の続編、というのは読み始めてから気がつきました。アユムくん、首絞め癖の次は嘔吐癖ですか…。
しかし、この嘔吐癖、物語上では結構重要な役割があって。主人公のアユムくんは作中ずっと、頭ではいろいろ考えていても本能とか感情に流されて行動してしまうわけです。頭ではヤらなくちゃと思っても、感情が邪魔をしてヤれない。そんなことが多々。頭でいくら抑えようとしても流れ出てくる感情。象徴としての嘔吐癖。
そんな感情という濁流に流され続けたアユムくんが、最終的にどうなるのか。ワニというよりはゲロ、な物語ではあったけれども、いや、そんな物語だからこそ、最後に濁流の中で抗う彼の姿は、美しく写りました。

2013.05.29

ゆうき
タイトルを変えてしまいたくなるほどの内容!気になってしまいます(笑)。人間の頭は色々なことを考えていたとしても、必ずそれに伴った行動をするとは限りません。本能に抗えず行動してしまう主人公がラストではどんな姿を見せてくれるのか…期待が膨らみます!
さやわか
ちょっとライトな文体で書いてありますが、ちゃんとレビューとしての体裁を保とうとしているのがうまいですね。飄々としながら急所を突くような手練れらしさを感じました。「銅」とさせてください! これを「銀」にするためには、そうですね、「頭ではいろいろ考えていても本能とか感情に流されて行動してしまうわけです」あたりのくだりをもうちょっと整理して書いてもいいかなと思います。「行動してしまうわけです」と言いつつ「感情が邪魔をしてヤれない」と言う。その後にも「いくら抑えようとしても」「流れ出てくる」「流され続けた」と書いてあって、いったいアユムくんは行動してしまうのか、それともできないのかがちょっとわかりにくい。じっくり読むと、これは「感情に支配されると頭で思ったのと違うことをやってしまう」という意味だとわかるのですが、このレビューだと「やれる」「やれない」の二項対立で説明しているのでちょっとそこが伝わりにくいと思いますが、どうですか? あとなぜかこのレビュー、桑原さんへの私信の形で書いてあるんですね……(笑)。

本文はここまでです。