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読者レビュー

銅

おやすみ、ムートン

おはよう、ムートン

レビュアー:やぎぽん Novice

桑原由気さんと姫という言葉をワンセットにすべく、がんばりたいです。

本書の中では、印象的なワンセットとなる言葉がいくつか出てきます。”名前”と”なんだい”、”いってらっしゃい”と”おかえりなさい”など。では、タイトルにもなっている”おやすみ”とワンセットとなる言葉はどうでしょうか。おそらくそれは、ムートンがみんなと友達になるために使った、あの言葉です。
本書を読み終わって、タイトルを噛み締めて、思わずムートンを抱きしめたくなりました。でも、肝心のムートンがいません。しょうがないので、本書を抱きしめて言います。
「おはよう、ムートン」と。

”おはよう”とは、友達になるため踏み出す第一歩。”いってらっしゃい”とは旅立つ冒険者を見送る魔法の言葉。ムートンの眼を通すだけで、普段なにげなく使っている言葉たちが、いつもとは違って見えます。そして、なんだかとても愛おしく思えてくるのです。
SF小説で、宇宙が舞台で、主人公がロボットなのに、物語の中の感情は、読んでいる私のものとどこまでも地続きで。なんだか不思議な気分。
日常に溢れる当たり前の言葉と、少しずつ成長していくムートンを、思わず抱きしめたくなる素敵な物語でした。

2013.05.29

ゆうき
レビュータイトルから優しい気持ちが伝わってきました。普段何気なく使っている言葉たちが、違って見える…それは、大げさに言ってしまえば、世界が変わって見えるような感覚ではないかと思います。とても不思議な感覚ですが、ちょっぴり楽しそうです! “思わず抱きしめたくなる”そんな気分にさせてくれる物語、とっても素敵ですね!
さやわか
ワンセットとなる言葉についての言及から入っているのは、作品に対する読者の興味を惹きやすくてとてもよいと思いました。レビューとしても簡潔で好ましく、しかも読後感がすっきりとしたポジティブさに向かうようになっているのも個人的に好きです。「銅」といたします! これ以上なにを変えようかというところですが、「では、タイトルにもなっている”おやすみ”とワンセットとなる言葉はどうでしょうか。おそらくそれは、ムートンがみんなと友達になるために使った、あの言葉です。」というあたりがちょっと文章としてややこしく、引っかかるかなと思います。ここは「おはよう」という言葉をそのままずばりと書くことを避けている部分で、それ自体は文章のテクニックとしてあり得るものです。しかし作品中で何が起こったを特に語るわけでもなく、「あの言葉」という抽象度の高い表現も混ぜているわけで、レビューの読者に捉え所がない印象を与えるように思います。お進めなのは、年の近い身近な他人、特に自分とは全く違う趣味を持った人になったつもりでこの文章を読んでみることです。あるいは、そういう人が読むような雑誌に載っていると考えて書いてみる。そうすると、言葉の選び方がちょっとずつ変わっていくと思いますぞ。

本文はここまでです。