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読者レビュー

鉄

ジスカルド・デッドエンド

リアルフィクション

レビュアー:ラム、ユキムラ

 ジスカルドは死んだ。
泉さんがそう言うのならそうなんだろう。
信じられなくても。
 でも、作家・泉和良は生きてる。

『エレGY』をきっかけにアンディーメンテというフリーウェアゲームサークルを知った。
私は生きている【ジスカルド】を知らない。
『ジスカルド・デッドエンド』に出てくるゲームをプレイしたことがない。

 話に出てくるキャラクターを知らない。知らずに今に至っている。

 全部本当にあったことだと思って読むと面白いですよ、と作者は言う。事実を基に書いているし、主人公にもモデルがいる、と。

 でもジスカルドは死んでも、泉さんは生きてる。

 泉さんにしかジスカルドは殺せない。

たぶん、泉さんがいるから、ジスカルドは死ねるんだね。

2012.06.08

のぞみ
むむむ……。
さやわか
お、どうしましたか姫。悩んでおられる……。
のぞみ
“知らない”とい事実はわかりましたわ!
さやわか
それ以外のことがわからなかった、という意味ですな! たしかに、このレビューはちょっとすっきりとは読み通せないところがある。「泉さんがそう言うのならそうなんだろう」というような慎重な書き方は、まさしく自分がこの物語の背景を「知らない」ことを理解した上で、なおその知らないものを語ってみせようというような意識を感じます。でも、知らないことはやっぱり書けないですから、書きあぐねているところがある、そんな印象です。結局ラストで何とか着地させつつ、「リアルフィクション」というタイトルもうまく決まっているようですね。うーん、しかし、ちょっとばかりですが、苦しいかな、とは思います。これは「鉄」にすべきかな……。では、どうすれば、もっとよくなったのでしょうか? 抽象的な言い方になりますが、「知らない」「プレイしたことがない」という作品の背景に対する「遠さ」が、もう少し書き手の作品に対する実感に結びついていればよかったかもしれません。そういう意味でも、これはやはり「銅」ではない、ということになるかな、と思います。

本文はここまでです。