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読者レビュー

銅

マージナル・オペレーション

有り得ないヒーロー

レビュアー:6rin Novice

元ニートのアラタは軍隊で部隊を操るオペレーターを務める。モニターに映し出される、敵や味方の部隊の位置を示すマップを睨み、部隊に指示を送るのが仕事だ。乱暴に言ってしまえば、この仕事はコンピューターゲームの戦争SLGのプレイヤーみたいなものなのだ。アラタは常に的確な指示を送る、優れたオペレーターだ。味方を危機から鮮やかに救う手腕が高く評価される。でも、SLGのプレイヤーみたいな仕事と聞いて、ゲームが得意な若者ならそんなに難しくなくて、実はアラタは大したことないんじゃないの? と疑問を感じる方もいるかもしれない。作者の芝村氏も最近の若者は英雄としての資質に恵まれていると言っている。

芝村氏が言うには、若者は損得勘定に長ける。だから、戦争において手持ちの選択肢から一番良いものを見つけられるであろう、ということらしい。
ただ、実際に大きな戦果を挙げるには、正しい選択肢を見つけるだけではダメで、実行が求められる。しかし、戦場には実行を妨害するものが沢山ある。敵の攻撃に対する恐怖心や、行動が自分や味方の生死を左右することに対するプレッシャーなどなど。それらがためらいや迷いを生み、判断を遅らせたり間違ったものにする。素早い適切な行動には、常に冷静な機械のような心が求められる。主人公アラタはその点でも非常に優秀だ。

上官の提示する、現実の戦闘を想定した、どんな指示を送ればよいかという問題に、上官を唸らせる指示をさっと答える。上官のプレッシャーに負ける同僚たちには真似できない速さと精度だ。実際の戦闘でもその早さと精度は変わらない。まさに機械である。そのうえ、仲間や一般人の損害を少なくすることを誰よりも考えて指示を送る優しさも併せ持つ。天才であり、ヒーローである。
コンピューターゲームみたいな指示を送るだけの仕事だけに、アラタのような機械の心を持ってなくても出来そうな気がついしてしまう。ヒーロー・アラタに憧れる。
でもそんな奴、絶対いないと思う。もともと特別な技能も持たないもやしっ子のニートが天才軍人になれるわけがないし、機械の心と人間らしい優しい心を合わせ持つって、どこのマンガの主人公だよって思う。現実にはありえない。それでもやっぱり憧れる。アラタはそれだけ素敵なヒーローだから。

最前線で『マージナル・オペレーション』を読む

2012.05.18

のぞみ
このレビューを読むと、ヒーローがなんだか身近に感じますわね!
さやわか
たしかに、アラタがヒーローたる所以はこの文章で理解できました! 「銅」にしましょう。ただ、彼がなぜ「素敵な」ヒーローなのかがちょっとわかりにくいかな、と思います。たぶんそれは語句が整理されていないせいだと思います。たとえば冒頭の「最近の若者は英雄としての資質に恵まれている」というのはどう考えるべきでしょうか。ここで言う「英雄」とは「ヒーロー」のことですよね。つまり「SLGのプレイヤーみたいな仕事」がうまくできる人はヒーローたりえる(資質がある)。しかし、レビューの後半ではアラタは「優しさも併せ持つ」「天才」だからあこがれのヒーローなのだと言っています。つまり資質を持っていることと実際にヒーローであることには差がある。それがちょっとわかりにくい。さらにラストもちょっと曖昧かなと思います。ここに書いてあるのはアラタは機械の心と人間らしい優しい心を合わせ持つ超人だけど、でも憧れる、なぜなら彼はそれだけ素敵なヒーローだから、ということが書いてあると思います。では「それだけ素敵な」が指しているものは何でしょうか? それは彼が「機械の心と人間らしい優しい心を合わせ持つ超人であること自体に戻ってしまうのではないでしょうか。つまりここは「AはBである、なぜならAはBだから」という同語反復になっているように感じられます。どうでしょうか?

本文はここまでです。