ここから本文です。

読者レビュー

銀

夜跳ぶジャンクガール

ゴミ虫を照らす月

レビュアー:6rin Novice

 高校生の少年は姉の死に対する罪悪感から「首絞め衝動」にかられるようになり、幼馴染に首を絞めさせて貰う日々を送る。少年は言う。
「僕は糞のゴミ虫で、一番に死ぬべきは僕だ」
 そんなダメ人間の壊れた日常は「連続少女自殺中継事件」に絡んだ悲劇によって、さらに壊される。悲劇が少年の心に重くのしかかるのだ。見渡す限り瓦礫のようなその世界で、少年は宝物を見つける。それは、クラスメイトの墓無美月のことが自分を捨ててでも守りたいほど「好き」という感情だ。
 運命は宝物のために命を落とす覚悟を少年に求める。
「本当に自分を捨ててでも守りたい宝物ならば、そのために死んでも構わないだろ?」と。
 少年は命を投げ出し、宝物である「好き」が自身の全てであることを傷だらけの身体で証明する。命をかけ貫き通される少年の「好き」が、僕には見るのが辛いほど眩しかった。少年はダメ人間にも輝きが宿りうることをも証明しているのだ。
 「僕なんて…」「私なんて…」と劣等感に縛られ、自らが輝くことを諦めている者にとって、少年の輝きは希望となる。その光は、諦めた者たちが囚われた監房に、小さな格子窓から射し込む。
 物語は読者に問いかける。
「お前も明るい外に出たくなっただろ?」と。
 本書は輝くことを諦めた者たちの夜を照らす、希望の月なのだ!

2012.01.30

さやわか
これは面白いですな。『夜跳ぶジャンクガール』という作品を短く、しかもきれいに説明しきっている。主人公がわけもなく「首絞め衝動」に駆られてしまうというような作品には「主人公が何を考えているのか理解できない」という評が当然ありがちなのですが、この書き手は、だからこそむしろ「なぜこの作品はこのように書かれているのか」を語ろうとしていて、好感が持てます。それは、主人公に共感したかどうかとはさらに別の段階にある書き方です。「金」にしようかなと一瞬思ったほどなのですが、後半の主張がどこまで読者に届くかという課題があるのはたしかなので「銀」とさせてください。でも、いいレビューだと思いますよ。

本文はここまでです。