面接ではウソをつけ
「面接ではウソをつけ」という物語
レビュアー:大和
“星海社新書の目的は、戦うことを選んだ次世代の仲間たちに「武器としての教養」をくばることです”という文章が星海社新書のレーベル紹介文に載っていて、その考え方自体は諸手を上げて賛同する。のだけど、しかし困ったことに、星海社新書を次々と読んでたら、なんだか食傷気味になってきた。
現代においてはあらゆるコンテンツは消費されるスピードが早く、終身雇用は崩壊しはじめ、もはや以前までに共有されていた人生のロールモデルは通用せず、(少なくともそういった危機感が世の中には確実に芽生えていて、)そういう流動性の高い社会に対応するには、あらゆる状況で通用するような汎用性のある意思決定の技術、態度、思考法、といったものが重要になってくるので皆さん習得しましょう――というのが、星海社新書が掲げている話なのだと思う。
だがそういう話になると、どうにも「慣例に流されず自分の頭で考えましょう」「物事の本質に目を向けましょう」といった、態度や心構えに辿りつく話になってしまう。無論それぞれ違う題材やテクニックによって調理されているのだけど、最終的には同じようなテーマやメッセージに辿りついてしまうため、一見して全然違う料理だけど実は全部卵料理なんです!ジャジャーン!みたいな感じがしてしまい、もう卵飽きたよ、という気分になっている。無論、読書体験や読み方は人それぞれなので、それは単に僕の読書スタイルが噛み合ってないという話でしかない。だが正直なところ、段々と食指が動かなくなっている。うーん、困った。
そして本書も正しく星海社新書のコンセプトを貫いているのだが、これが思いのほか、読んでいて「楽しい」本だったので驚いた。本書は就職活動、とりわけ面接に焦点をあてた本だ。著者は面接と営業は似ていると語り、営業マンとしての経験をベースに、面接を突破するにはどうするべきかを説いていく。しかしマニュアル的に攻略法を語っていく本ではない。
「この本は弱者のための本です」という言葉を著者は繰り返すのだが、それはまさに著者自身も「弱者」であった経験から来ている。著者はかつて7年もの間、成績が悪くてクビ寸前の営業マンとして過ごしていた。しかし自身の営業方法が間違っていたことに気づき、アプローチを変えてみたところ、4年連続でトップの営業マンとして活躍することになる。
その経験が本書では生かされている。著者はまず営業マンとしての困難――間違いや勘違いを提示し、それがある「気付き」をきっかけに改善し、成功へと辿りついたプロセスを語る。それはまるで読者が著者の「気付き」を追体験していくかのようだ。そうした「気付き」の体験が次々とテンポよく語られていく様は実に痛快で小気味良い。つまるところ、僕にとって本書は、かつて営業マンとして挫折と成功を味わった男が就職活動や面接の世界に挑んで行く物語であり、エンタテインメントなのである。
恐らくそれは面白さを追求した結果ではなく、やはり著者の営業マンとしての経験が導いてみせたのだろう。著者が営業・面接のコツとして何度も語るのは「相手の立場で考える」ということだ。本書そのものにおいても著者は相手=読者の立場になるということを徹底し、自身の経験やメッセージを読者が分かりやすく理解できるように、そうした体験談のリズムを用いている。まるで著者が得た極意を惜しみなく凝縮したかのような一冊だ。だから本書は必ずしも面接を控えた人々だけを射程に捉えたものではなく、万人が読める/読むことで何かを得られる本になっているし、僕も自信をもって薦めることができる。
新書として、エンタメとして、本書の門戸は大きく開かれている。こんな風に、楽しい読書体験を与えてくれる本を、星海社新書はたくさん作ってほしい。
現代においてはあらゆるコンテンツは消費されるスピードが早く、終身雇用は崩壊しはじめ、もはや以前までに共有されていた人生のロールモデルは通用せず、(少なくともそういった危機感が世の中には確実に芽生えていて、)そういう流動性の高い社会に対応するには、あらゆる状況で通用するような汎用性のある意思決定の技術、態度、思考法、といったものが重要になってくるので皆さん習得しましょう――というのが、星海社新書が掲げている話なのだと思う。
だがそういう話になると、どうにも「慣例に流されず自分の頭で考えましょう」「物事の本質に目を向けましょう」といった、態度や心構えに辿りつく話になってしまう。無論それぞれ違う題材やテクニックによって調理されているのだけど、最終的には同じようなテーマやメッセージに辿りついてしまうため、一見して全然違う料理だけど実は全部卵料理なんです!ジャジャーン!みたいな感じがしてしまい、もう卵飽きたよ、という気分になっている。無論、読書体験や読み方は人それぞれなので、それは単に僕の読書スタイルが噛み合ってないという話でしかない。だが正直なところ、段々と食指が動かなくなっている。うーん、困った。
そして本書も正しく星海社新書のコンセプトを貫いているのだが、これが思いのほか、読んでいて「楽しい」本だったので驚いた。本書は就職活動、とりわけ面接に焦点をあてた本だ。著者は面接と営業は似ていると語り、営業マンとしての経験をベースに、面接を突破するにはどうするべきかを説いていく。しかしマニュアル的に攻略法を語っていく本ではない。
「この本は弱者のための本です」という言葉を著者は繰り返すのだが、それはまさに著者自身も「弱者」であった経験から来ている。著者はかつて7年もの間、成績が悪くてクビ寸前の営業マンとして過ごしていた。しかし自身の営業方法が間違っていたことに気づき、アプローチを変えてみたところ、4年連続でトップの営業マンとして活躍することになる。
その経験が本書では生かされている。著者はまず営業マンとしての困難――間違いや勘違いを提示し、それがある「気付き」をきっかけに改善し、成功へと辿りついたプロセスを語る。それはまるで読者が著者の「気付き」を追体験していくかのようだ。そうした「気付き」の体験が次々とテンポよく語られていく様は実に痛快で小気味良い。つまるところ、僕にとって本書は、かつて営業マンとして挫折と成功を味わった男が就職活動や面接の世界に挑んで行く物語であり、エンタテインメントなのである。
恐らくそれは面白さを追求した結果ではなく、やはり著者の営業マンとしての経験が導いてみせたのだろう。著者が営業・面接のコツとして何度も語るのは「相手の立場で考える」ということだ。本書そのものにおいても著者は相手=読者の立場になるということを徹底し、自身の経験やメッセージを読者が分かりやすく理解できるように、そうした体験談のリズムを用いている。まるで著者が得た極意を惜しみなく凝縮したかのような一冊だ。だから本書は必ずしも面接を控えた人々だけを射程に捉えたものではなく、万人が読める/読むことで何かを得られる本になっているし、僕も自信をもって薦めることができる。
新書として、エンタメとして、本書の門戸は大きく開かれている。こんな風に、楽しい読書体験を与えてくれる本を、星海社新書はたくさん作ってほしい。