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読者レビュー

銅

iKILL2.0

ページの中から語りかける声

レビュアー:zonby Adept

声が、聴こえると思った。
実際に耳に届く訳ではない。
読んだ文章が脳内で響き、呼応するように内側から声がする、と思った。
その声は問う。
それは牽制するようにも、誘うようにも聴こえる。

「次のページを読むか?読まないか?」

その声を打ち消すように、私は次々とページをめくることを選択し続ける。
まるでその声を無視しようかとするように。
まるで、先急ぐように。

前作の「iKILL」を読んでいたので、その内容が一筋縄ではいかないこと。おそらく目を背けたくなるような残酷な描写がされることは、ある程度予測がついていた。
しかし私は一ページ目の見開きで、早くも出鼻をくじかれることとなる。
文字は横書きで、左は誰かの告白文から始まる。そして右ページにはこんな文字。

*このメールは全自動でお届けしています
*ご興味があれば、ページを送って、読み続けて下さい
*あなたが読み続ける限り、配信は続きます。
*ご興味がなければ、読むことを中断するのも、それはあなたの自由です。

私はこれらの文章が、メールに送られているという設定で書かれていることを理解する。
ああ、そういう世界観なのか。そういう約束なのか。
この四つの*の意味を、私はその程度にしか受け取らず、「読む」ことを選択して次のページをめくった。めくってしまったのだ。

―――やがて私は、「iKILL 2.0」を読み終える。
「iKILL 2.0」を読む前の私とは、微妙に意識の変化した私だけがそこに残る。
読む前の私には戻れない。
声はもう、聞こえない。

読み終えた私は、考える。
この物語を、"読まない勇気"がある人間がいるだろうか。
読み続ける限り、終着点まで止まらない残酷な配信を、途中でなかったことにできる人間がいるだろうか。
読み終わって尚、読む前と一ミリたりとも変わらずにいられる人間が、いるのかどうか、と。

「次のページを読むか?読まないか?」

この声、聴こえますか?

2011.12.20

のぞみ
ドキドキしながらページを捲っていったのだろうな~と思いました。
さやわか
緊張感が伝わってきますね。物語の内容にはほとんど触れていないけど、そういう緊張感を強いる小説なんだってことは伝わる。読書体験が描かれれば、レビューとしては成り立つわけですな。読者をソワソワさせる、含みのある書き方になっていることが、書き手がこの本に感じた抗いがたい魅力を表現することにもなっている。いいのではないでしょうか。ということで「銅」にさせていただきました。

本文はここまでです。