泉和良『私のおわり』販促ダイレクトメール
本の国から抜き打ちで
レビュアー: k.d.q.
『STEINS;GATE』の話をしながら家族に行ってらっしゃいを言って、玄関のドアを閉めがてら郵便物受けに手を突っ込んだらhuke氏のイラストが入っていたから驚いた。いま閉めたばかりの玄関をがばっと開けて家族を呼び止め「シュタゲの絵の人の絵が入ってた!」と報告したものの誰が何のために入れたのかその時点では分かっておらず、真っ先に頭に浮かんだのは毎週末我が家が夜中にシュタゲのアニメを視聴しているその音量が大きすぎることに対する近隣のどなたかからの無言の警告という可能性だった。しかしよく見ればハガキの右上には「料金特別納郵便 SEIKAISYA」の青い文字。よかった、迷惑しているご近所さんはいなかったんだ、とホッとしたものの改めて考えてみるとhuke氏の絵ハガキの差出人が星海社だった事実は我が家のテレビの音量が大きすぎない保証に全くなっていない。以後、今夜放送のシュタゲ第10話からさっそく、深夜のアニメ鑑賞には静粛を心がけたい。
そんなふうにして御近所トラブルから我が家を未然に守ってくれたのかもしれない星海社からのハガキについて、感謝の気持ちでレビューしてみる。
(1)サイズ
ハガキではあるが通常のハガキの寸法ではなく、ハガキを縦方向にやや間延びさせたような具合。以前星海社から星猫ストラップが届いたときに使われていた封筒と同じサイズ。この紙を横長に使って、切手を貼るほうの面の(料金別納郵便なので切手の欄に切手は無く、星海社のマークが入っている)右側ほぼ三分の一が宛名とリターンアドレスが記され、残りの面積がhuke氏描く女の子と白黒猫のバストアップ絵に充てられている。
横長の用紙を横向きに使ったことでどことなく「招待状」っぽい雰囲気が出ていて、手に取ったとき(正確にはそれが御近所からのブラックメールではないと理解したあとで)嬉しかった。通常サイズのハガキで日々無味乾燥に送りつけられてくる有象無象のダイレクトメールとは受け取った気分がちょっと違う「プチ特別」感、とてもよい。
(2)記載内容
『……そう。これは/私が死んでしまう/四日前の光景。泉和良/私のおわり』
『“死(エピローグ)”から始まる物語。/2011年6月15日星海社FICTIONSより発売予定』
以上の文面がピンクの活字でhuke絵の印刷されたほうの面に記載されている。ではもう片方の面には何が、と裏返すと、青い背景にでかでかと星海社FICTIONSのロゴ。それだけ。青々とした広大な余白はこれを見る者に「なるほど、このハガキは星海社の新刊の案内のために送られてきたのであってそれ以上でも以下でも以外の何物でもないのだな」と良くも悪くも分からせてくれる。
(3)要望
まず第一に、この家にはオタクが住んでいるということを郵便屋さんに知られて恥ずかしいのでこのハガキはできたら封筒に入れて送付していただきたかった。しかし過ぎたことを言ってもはじまらない。オタクはオタクなのだから逃げ隠れせず開き直って生きろという星海社からの檄として受け取っておく。
第二に、星海社のロゴで片面丸ごと使うんだったらそっちの面にこそhuke絵を割り振ってほしかった。あるいは、ロゴの左の贅沢な余白に泉和良氏のコメントなり竹さんの星猫イラストなり太田克史のキスマークなり、何かしら書き足してあったらもっと嬉しかった。いや、キスマークは嬉しくないかもしれない。でも貰ってみたら意外に嬉しいのかもしれない。
(4)嬉しさ
タダで貰っておいてああだこうだと要望を書き連ねたけれど、このハガキを郵便受けから出したときの嬉しさはちょっとしたものだった。たぶん他の人たちもだいたいみんなそうだったろうと推察する。と言うのは、星海社の読者層は(私のように星海社の出版物には今のところ手を出しておらず、ただサイトだけを日々覗いているエア講読者も読者の定義に入れていいものとして)読むのと同じに書くのも好きな人間によって結構な割合を占められているのではないかと端で見ていて感じるからだ。
ものを書くのが好きな人間は出版社から郵便物が来ると嬉しい。今回の星海社からの抜き打ちハガキは私にとって、遠い異国の地から絵葉書が届いたような(この場合「本の国」から)ささやかな非日常体験だった。
(5)レビューの〆としての昭和生まれブルース
一律に印刷されて一斉に送付される新刊本宣伝ダイレクトメールのハガキ一枚であっても、「郵便物」が届くのは同じ宣伝目的でEメールが届くのとは気分がこんなにも違う。不思議なものだ。同一文面一斉送信の宣伝Eメールは「不特定多数に対して言うだけ言って言い捨てる」感が強く、読んで損した気分になるのに。
私が昭和生まれだからだろうか? 星海社のこれからを支えていくだろう若い世代にとってはインターフェイスが紙であろうと液晶モニタであろうと大して違わないのだろうか? WEB展開と電子書籍への取り組みに意欲的な星海社からのダイレクトメールでこんなことを考えさせられるなんて皮肉な気もする。
そんなふうにして御近所トラブルから我が家を未然に守ってくれたのかもしれない星海社からのハガキについて、感謝の気持ちでレビューしてみる。
(1)サイズ
ハガキではあるが通常のハガキの寸法ではなく、ハガキを縦方向にやや間延びさせたような具合。以前星海社から星猫ストラップが届いたときに使われていた封筒と同じサイズ。この紙を横長に使って、切手を貼るほうの面の(料金別納郵便なので切手の欄に切手は無く、星海社のマークが入っている)右側ほぼ三分の一が宛名とリターンアドレスが記され、残りの面積がhuke氏描く女の子と白黒猫のバストアップ絵に充てられている。
横長の用紙を横向きに使ったことでどことなく「招待状」っぽい雰囲気が出ていて、手に取ったとき(正確にはそれが御近所からのブラックメールではないと理解したあとで)嬉しかった。通常サイズのハガキで日々無味乾燥に送りつけられてくる有象無象のダイレクトメールとは受け取った気分がちょっと違う「プチ特別」感、とてもよい。
(2)記載内容
『……そう。これは/私が死んでしまう/四日前の光景。泉和良/私のおわり』
『“死(エピローグ)”から始まる物語。/2011年6月15日星海社FICTIONSより発売予定』
以上の文面がピンクの活字でhuke絵の印刷されたほうの面に記載されている。ではもう片方の面には何が、と裏返すと、青い背景にでかでかと星海社FICTIONSのロゴ。それだけ。青々とした広大な余白はこれを見る者に「なるほど、このハガキは星海社の新刊の案内のために送られてきたのであってそれ以上でも以下でも以外の何物でもないのだな」と良くも悪くも分からせてくれる。
(3)要望
まず第一に、この家にはオタクが住んでいるということを郵便屋さんに知られて恥ずかしいのでこのハガキはできたら封筒に入れて送付していただきたかった。しかし過ぎたことを言ってもはじまらない。オタクはオタクなのだから逃げ隠れせず開き直って生きろという星海社からの檄として受け取っておく。
第二に、星海社のロゴで片面丸ごと使うんだったらそっちの面にこそhuke絵を割り振ってほしかった。あるいは、ロゴの左の贅沢な余白に泉和良氏のコメントなり竹さんの星猫イラストなり太田克史のキスマークなり、何かしら書き足してあったらもっと嬉しかった。いや、キスマークは嬉しくないかもしれない。でも貰ってみたら意外に嬉しいのかもしれない。
(4)嬉しさ
タダで貰っておいてああだこうだと要望を書き連ねたけれど、このハガキを郵便受けから出したときの嬉しさはちょっとしたものだった。たぶん他の人たちもだいたいみんなそうだったろうと推察する。と言うのは、星海社の読者層は(私のように星海社の出版物には今のところ手を出しておらず、ただサイトだけを日々覗いているエア講読者も読者の定義に入れていいものとして)読むのと同じに書くのも好きな人間によって結構な割合を占められているのではないかと端で見ていて感じるからだ。
ものを書くのが好きな人間は出版社から郵便物が来ると嬉しい。今回の星海社からの抜き打ちハガキは私にとって、遠い異国の地から絵葉書が届いたような(この場合「本の国」から)ささやかな非日常体験だった。
(5)レビューの〆としての昭和生まれブルース
一律に印刷されて一斉に送付される新刊本宣伝ダイレクトメールのハガキ一枚であっても、「郵便物」が届くのは同じ宣伝目的でEメールが届くのとは気分がこんなにも違う。不思議なものだ。同一文面一斉送信の宣伝Eメールは「不特定多数に対して言うだけ言って言い捨てる」感が強く、読んで損した気分になるのに。
私が昭和生まれだからだろうか? 星海社のこれからを支えていくだろう若い世代にとってはインターフェイスが紙であろうと液晶モニタであろうと大して違わないのだろうか? WEB展開と電子書籍への取り組みに意欲的な星海社からのダイレクトメールでこんなことを考えさせられるなんて皮肉な気もする。