ひぐらしのなく頃に 鬼隠し編
最初にして最終形の物語
レビュアー:zonby
「ひぐらしのなく頃に」が話題になり始めた頃。あれはそう、同人ゲームとして名をあげ、漫画化、アニメ化、ゲーム化と様々にメディアミックスされ始めた時分だっただろうか。
私はそれらを横目に見ながら、こう思っていた。
絶対に、「ひぐらしのなく頃に」なんて見てやるものか。
理由は実に単純。ちょっとグロいけど、魅力的な女の子が出てきてラブ&ピースな流行の軽いお話だと思いこんでいたからだ。周囲の評判も、○○属性やら巫女服メイド猫耳ギャルゲーなど表面上のキャラクターのネタ的要素。いわゆる萌えとしての記号ばかりが強調されていた感がある。そんな感想を耳に挟む度にさらに私は頑なに「ひぐらしのなく頃に」から一定の距離を保ったまま、興味はあるけど見たら負けという一人冷戦状態で膠着していた。
そんな私が「ひぐらしのなく頃に」の世界に初めて触れたのは、漫画である。友人に借りたのだ。ははあ、まあそろそろ周りの熱も冷めたようだし、読むだけ読んでみようと手にとったのが運のツキ。
――はまった。
気づいたらPS2版のゲームをプレイしていた。それどころかPCの体験版もプレイしていた。銀BOXで出版されているものも読んで、星海社文庫に至った次第である。
最初の決意は何だったのであろう。どのメディアで物語を体験しても内容は皆同じなのである。雛見沢という寂れた村に一人の少年が引っ越してくる。少年を取り巻く個性的で魅力的な少女達。しかしそこで怪事件が起こり少年の日常は脆くも崩れ去る…などと書くと、本当に単純だ。あらすじも結末も知っているのに、あらゆるメディアを横断してその世界に触れてしまう恐ろしいまでの求心力…。
噂に聞いていた○○属性も巫女服メイド猫耳ギャルゲーその他諸々、確かにあった。けれどそれらはあくまで表面的な装飾で、その下には怖気が走るほど魅力的な謎と伏線が張り巡らせられていた。陽気で軽快なキャラクター達の残酷で複雑な心理が、見事に描き切られていた。
ポップでキッチュな包装紙をはぎ取った末に、湯気のたつ内臓を見つけてしまったような。
甘くて美味しいお菓子にかけられたシロップが、実は人間の血液だったかのような。
それが、私が垣間見た「ひぐらしのなく頃に」だった。
中でも最も最初の作品である「鬼隠し編」が、私は一番好きである。初めて物語を読んだ時、明かされなかった謎と散りばめられた断片を、繋げては壊し繋げては壊し、どきどきして眠れなかった程だ。正解率1%は伊達ではない。
本気で推理したいと思うならば「鬼隠し編」は、全編くまなく一文一句、油断してはならない作品だ。彼と彼女達のさりげない日常、楽しげな一コマ、間に挟まる破片的な文章にまで、神経を張り巡らせていなければならない。そしてそれらにこそここから始まる「ひぐらしのなく頃に」シリーズのすべてに共通する核のようなものが極めて巧妙に潜み、息づいている。
シリーズを読む進めていく内に、いろいろと分かってくることがあると思う。けれど、全てを知った後、もう一度読み直したくなるだろう。
最初にして、最終形ともいえるこの物語を。
消費物としての物語が多い中、原点をもう一度確かめたいという気持ちにさせられる稀な作品だと思う。
私はそれらを横目に見ながら、こう思っていた。
絶対に、「ひぐらしのなく頃に」なんて見てやるものか。
理由は実に単純。ちょっとグロいけど、魅力的な女の子が出てきてラブ&ピースな流行の軽いお話だと思いこんでいたからだ。周囲の評判も、○○属性やら巫女服メイド猫耳ギャルゲーなど表面上のキャラクターのネタ的要素。いわゆる萌えとしての記号ばかりが強調されていた感がある。そんな感想を耳に挟む度にさらに私は頑なに「ひぐらしのなく頃に」から一定の距離を保ったまま、興味はあるけど見たら負けという一人冷戦状態で膠着していた。
そんな私が「ひぐらしのなく頃に」の世界に初めて触れたのは、漫画である。友人に借りたのだ。ははあ、まあそろそろ周りの熱も冷めたようだし、読むだけ読んでみようと手にとったのが運のツキ。
――はまった。
気づいたらPS2版のゲームをプレイしていた。それどころかPCの体験版もプレイしていた。銀BOXで出版されているものも読んで、星海社文庫に至った次第である。
最初の決意は何だったのであろう。どのメディアで物語を体験しても内容は皆同じなのである。雛見沢という寂れた村に一人の少年が引っ越してくる。少年を取り巻く個性的で魅力的な少女達。しかしそこで怪事件が起こり少年の日常は脆くも崩れ去る…などと書くと、本当に単純だ。あらすじも結末も知っているのに、あらゆるメディアを横断してその世界に触れてしまう恐ろしいまでの求心力…。
噂に聞いていた○○属性も巫女服メイド猫耳ギャルゲーその他諸々、確かにあった。けれどそれらはあくまで表面的な装飾で、その下には怖気が走るほど魅力的な謎と伏線が張り巡らせられていた。陽気で軽快なキャラクター達の残酷で複雑な心理が、見事に描き切られていた。
ポップでキッチュな包装紙をはぎ取った末に、湯気のたつ内臓を見つけてしまったような。
甘くて美味しいお菓子にかけられたシロップが、実は人間の血液だったかのような。
それが、私が垣間見た「ひぐらしのなく頃に」だった。
中でも最も最初の作品である「鬼隠し編」が、私は一番好きである。初めて物語を読んだ時、明かされなかった謎と散りばめられた断片を、繋げては壊し繋げては壊し、どきどきして眠れなかった程だ。正解率1%は伊達ではない。
本気で推理したいと思うならば「鬼隠し編」は、全編くまなく一文一句、油断してはならない作品だ。彼と彼女達のさりげない日常、楽しげな一コマ、間に挟まる破片的な文章にまで、神経を張り巡らせていなければならない。そしてそれらにこそここから始まる「ひぐらしのなく頃に」シリーズのすべてに共通する核のようなものが極めて巧妙に潜み、息づいている。
シリーズを読む進めていく内に、いろいろと分かってくることがあると思う。けれど、全てを知った後、もう一度読み直したくなるだろう。
最初にして、最終形ともいえるこの物語を。
消費物としての物語が多い中、原点をもう一度確かめたいという気持ちにさせられる稀な作品だと思う。