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レビュアー「秋野カゲフミ」のレビュー

銅

金の瞳と鉄の剣

共に歩く理由

レビュアー:秋野カゲフミ Novice

この二人、なんで一緒にいるんだ。
読み始めてすぐこの違和感を感じ、読み進めるほどにより強くなった。
明らかに共通の目的などない。
名声を求めるタウに対して、タウがそう言うなら、という感じでついていくキア。
お互い依存しているような雰囲気でもなく、別に一緒じゃなくてもうまくやっていけるのではないかと思ってしまう。
そして決定的なのは龍との戦いにおけるキアの力。これだけの力があるのにやっていることはタウと共に傭兵稼業で日銭稼ぎである。
違和感だらけであるのに、当の二人は共に歩くことをごく自然に行っている。そしてお互いの行動を信頼しきっている。妖精郷に囚われた時など、タウはその解明をキアに任せ切った。そして自分の仕事は休むことだと判断し、結局第二話でタウは、食って飲んで寝てただけである。ニートである。
そしてさらに読み進めると、キアの異常さ、危険さがより浮き彫りになってくる。第三話でのラルーバスとの対話、第四話での薬売り、話が進むほどキアの恐ろしさに気付かされる。
そうして第四話まで読み進めた所で、キアに対して”どうしてタウなんかに付き合っているんだ”と、タウに対して”どうしてそんな恐ろしい存在と一緒に入られるのだ”と、問いかけたくてしかたなくなる。
そんなところであらわれたのが、最後の第五話である。タウとキアの出会いの物語。これがすべてに答えてくれた。
タウはキアに世界を見せるという目的を得た。キアはタウの相棒というアイデンティティを得た。二人が共に歩く理由にはこれで十分なのだ。

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2011.12.20


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