『星海大戦』。この直球ど真ん中のタイトルのSF小説を星海社から出版する。それだけで著者の覚悟が伝わって来るというものです。そして読んでみれば、この1冊は長い物語(サーガ)の始まりでしかないことが分かります。
時は未来、所は太陽系。二派に分かれて宇宙で争い続ける人類の物語。異なる出自と才能と戦う理由を持った3人の男たちが初めて砲火を交えます。
しかし、作者・元長柾木が描く「宇宙での砲火の交え方」は非常に特殊でした。と言うのも、実際に宇宙戦艦が宇宙空間で戦ったら、その戦闘シーンは味気ないものにならざるを得ません。強力なレーザーのような光学兵器なら、発射されたと同時に命中して戦闘は終了。ミサイル兵器なら超遠距離から放出して、着弾するのは何時間、下手をすると何十時間後。そして全ては暗黒と無音の中、これでは甚だ盛り上がりに欠けます。
作劇上の嘘と割り切って、上下左右のある宇宙で、互いに目視確認しながら、輝くレーザー光線の発射音や爆発音を轟かせて戦うシーンを描くのも一案ですが、作者はノウアスフィア機関を「発明」し、精緻に設定を積み上げることで、読者に説得力のある宇宙艦隊の戦闘や戦術を描き出すことに成功します。
ところが、ところがですよ。せっかく積み上げたその前提を、作者はいきなり登場人物にひっくり返させるのです。その結果、再び読者の前に提示されるカオス。なるほど、あとがきで「ここから、SFが、物語がはじまります」とあるように、真の物語は、この先から始まるのですね。
この一冊を手にした人は幸いです。新しいサーガの誕生に立ち会え、ともに歩めるであろうから。
時は未来、所は太陽系。二派に分かれて宇宙で争い続ける人類の物語。異なる出自と才能と戦う理由を持った3人の男たちが初めて砲火を交えます。
しかし、作者・元長柾木が描く「宇宙での砲火の交え方」は非常に特殊でした。と言うのも、実際に宇宙戦艦が宇宙空間で戦ったら、その戦闘シーンは味気ないものにならざるを得ません。強力なレーザーのような光学兵器なら、発射されたと同時に命中して戦闘は終了。ミサイル兵器なら超遠距離から放出して、着弾するのは何時間、下手をすると何十時間後。そして全ては暗黒と無音の中、これでは甚だ盛り上がりに欠けます。
作劇上の嘘と割り切って、上下左右のある宇宙で、互いに目視確認しながら、輝くレーザー光線の発射音や爆発音を轟かせて戦うシーンを描くのも一案ですが、作者はノウアスフィア機関を「発明」し、精緻に設定を積み上げることで、読者に説得力のある宇宙艦隊の戦闘や戦術を描き出すことに成功します。
ところが、ところがですよ。せっかく積み上げたその前提を、作者はいきなり登場人物にひっくり返させるのです。その結果、再び読者の前に提示されるカオス。なるほど、あとがきで「ここから、SFが、物語がはじまります」とあるように、真の物語は、この先から始まるのですね。
この一冊を手にした人は幸いです。新しいサーガの誕生に立ち会え、ともに歩めるであろうから。