同人小説というスタートから全七章劇場アニメ映画化まで至り”新伝綺”というジャンルを確立した『空の境界』。そのコミカライズ作品。
小説『空の境界』、私にとってそれはサブカルの世界に引き擦り込まれるきっかけとなった作品。そして書店で文庫版と出会って以来、漫画化を待望していた作品でもある。
期してそれは現実に!星海社のWebサイト最前線で漫画版『空の境界 the Garden of sinners』は公開される!Twitterでリンクを見つけたときの感動はいまでも覚えている。
そして漫画版『空の境界 the Garden of sinners』は私が(勝手に)高々と設置したそのハードルを見事に越えて見せた。
コクトーと式の微妙な距離感や、迷路を歩くような登場人物たちの会話の”静”、ビル間を飛び交う姿、衝撃の伝わる”動”。私が小説版を初めて読んだときのあのイメージが絵画となってそこにあった。
それだけではない、漫画版『空の境界 the Garden of sinners』は漫画作品でありながらその中に「光の演出」があったのだ。日常の暖かさや、暗い部屋の冷たさ、ナイフの鋭さ、それらが光で表現されより臨場感のあふれる演出が成されていた。特に2/『殺人考察(前)』第一回の赤色の描写は生々しさと艶やかさを同時に作り出していて思わずゾクリとしてしまった。
作品としてこれほどの完成度のある漫画版『空の境界 the Garden of sinners』ではあるが私は1つだけこの作品に求めたいものがある。
それは”オリジナリティ”である。
”オリジナリティ”といってもストーリー展開を変えたりとかオリジナルストーリーを加えたりとかそういったものではなく、”漫画版『空の境界 the Garden of sinners』”としての新しいスタイルを見たいということだ。
漫画版『空の境界 the Garden of sinners』を見ていると割りと頻繁に”劇場版『空の境界』”と被ったカットが出てくる。一度アニメ作品として視覚化されてしまった以上、仕方ないのかもしれない。しかし私は、天空すふぃあ先生の描く”漫画版『空の境界 the Garden of sinners』”を読んで、見てみたい。と、思うのだ。
私の期待を飛び越えた漫画版『空の境界 the Garden of sinners』だからこそ今後の展開と発展に期待していきたい。
空の境界 the Garden of sinners
静と動、それと光
レビュアー:生(なま)