イオン『フィラメントスター』
「誰か」への通信。イオンという少女の物語。そして私たちの物語。
レビュアー:USB農民
この「お話」は圧倒的に正しい。だからイオンは「(このお話は)書いただけで意味があった」と言う。でもその後すぐに、「やっぱり貴方に聞いてもらって完成する気がする」とも言う。どっちだよ、と思うが、どっちも正解で、とにかくイオンが語るこの「お話」は圧倒的に正しい。
自分が持っていないものを知るには時間がかかる。それは、才能だったり、若さだったり、知性だったり、マナーだったり、とにかく「ない」ことを知るのは時間がかかる。すごく時間がかかる。そして、知ると絶望する。とんでもなく辛いことになる。この「お話」の少女もまた、ずっと一人で暮らしていたことや、自分には「誰か」がいないことに気づくのに時間がかかった。気づいてからはすごく辛い。それから少女は、ずっと「誰か」について考えて、「誰か」に向かって交信を試みる。
「誰かへの通信」というモチーフは、この朗読CDというメディアや、ゲームのキャラクターとコミュニケーションを行う原作ゲーム『シェルノサージュ』の構造が強く意識されている。幻かもしれない星の光に言葉を投げるイオンと、(言うまでもなく虚構の存在である)イオンに向かって、コミュニケーションを行う『シェルノサージュ』のプレイヤーはとても似ている。
私たちは虚構のキャラクターや人格に向けて言葉を投げることができる。ヒーローショーのヒーロー。たまごっち。二次嫁。アイドル。神様。幽霊。キャバクラ。ぬいぐるみ。本当は存在しない、あるいは作られた存在であることを知っていながら、言葉を投げることができる。
私は、それをとても素晴らしいことだと思う。
「誰か」に向けて言葉を投げることは、悲しくもないし、虚しくもないし、まして無意味だなんてことは全くない。
「誰か」に向けた言葉は、形がなくても、触れなくても、自分の心に何かを残す。
イオンは、この「お話」を作ることで、そんな風に「誰か」への通信を肯定していて、それは圧倒的に正しいと私は思う。
この「お話」は、イオンという少女の物語だ。
そして、私たちの物語だ。
自分が持っていないものを知るには時間がかかる。それは、才能だったり、若さだったり、知性だったり、マナーだったり、とにかく「ない」ことを知るのは時間がかかる。すごく時間がかかる。そして、知ると絶望する。とんでもなく辛いことになる。この「お話」の少女もまた、ずっと一人で暮らしていたことや、自分には「誰か」がいないことに気づくのに時間がかかった。気づいてからはすごく辛い。それから少女は、ずっと「誰か」について考えて、「誰か」に向かって交信を試みる。
「誰かへの通信」というモチーフは、この朗読CDというメディアや、ゲームのキャラクターとコミュニケーションを行う原作ゲーム『シェルノサージュ』の構造が強く意識されている。幻かもしれない星の光に言葉を投げるイオンと、(言うまでもなく虚構の存在である)イオンに向かって、コミュニケーションを行う『シェルノサージュ』のプレイヤーはとても似ている。
私たちは虚構のキャラクターや人格に向けて言葉を投げることができる。ヒーローショーのヒーロー。たまごっち。二次嫁。アイドル。神様。幽霊。キャバクラ。ぬいぐるみ。本当は存在しない、あるいは作られた存在であることを知っていながら、言葉を投げることができる。
私は、それをとても素晴らしいことだと思う。
「誰か」に向けて言葉を投げることは、悲しくもないし、虚しくもないし、まして無意味だなんてことは全くない。
「誰か」に向けた言葉は、形がなくても、触れなくても、自分の心に何かを残す。
イオンは、この「お話」を作ることで、そんな風に「誰か」への通信を肯定していて、それは圧倒的に正しいと私は思う。
この「お話」は、イオンという少女の物語だ。
そして、私たちの物語だ。