2WEEKS 人形使いのペトルーシュカ
未分化の生きものを見るような
レビュアー:鳩羽
なんとも不思議な小説だ。たびたび出てくるネクタールという単語からの連想のせいだろうか、液体のような固体のような、ねっとりと止まっている中に何かが蠢いているような不穏さを感じる。
驚異的な治癒力のせいで不死身になった少年と、同じく驚異的な身体能力を持った無敵の少女が出会った、その後の続きの話だ。墜落した宇宙船の一部であるネクタールというモノに、この特異能力は由来している。
主人公・上代は、死んだはずの存在を生き返らせたことに罪の意識を持ちながらも、とりあえずは平穏に暮らしていた。そこへホルマリン漬けにされた子供を生き返らせてほしいという女が現れ、仲間の命をたてに上代に能力を使うように脅迫する。
同級生や家族は、上代の視点から見るとまるで影絵のような存在感しかない。ガラス越しに見ているかのような、どうしようもなく隔てられた感覚があり、他の人間とは違うということは、こんなにも同じ空間を共有できないものなのかと薄ら寒い心持ちにすらなった。
死ぬはずだった存在を生き返らせたことは、上代にとって大きな十字架となってのしかかるが、不死身の上代にとっての贖罪とは果たして生きることなのか死ぬことなのか。そもそも死ぬことがない人間は、生きていると言えるのだろうか?
上代の思考は、不死身の肉体のなかをただどろりと巡っているだけだ。
積極的に解決すべき問題、倒すべき敵が見当たらないうちは、上代という存在はだらだらと心地よく揺蕩っているだけなのだろう。それはホルマリン漬けの子供とよく似ている。
瓶の中の子供を生き返らせるのか死なせるのか、決めてしまえばすっきりとすることに間違いはない。けれどこのまま、じわじわとした変化の成り行き任せに、閉じこもっていてはいけないだろうか。
健康的とは言えないが、その揺らぎに共振するとなんだかとても気持ちがいい。もうしばらく、このままとろとろと目を閉じて籠っていたい。そんな気分にさせられるのだ。
そしてその選択の方が、危険が少ない場合もある。
満ちてくる不穏の気配と、それに対する準備に、目が離せない2巻目だった。
驚異的な治癒力のせいで不死身になった少年と、同じく驚異的な身体能力を持った無敵の少女が出会った、その後の続きの話だ。墜落した宇宙船の一部であるネクタールというモノに、この特異能力は由来している。
主人公・上代は、死んだはずの存在を生き返らせたことに罪の意識を持ちながらも、とりあえずは平穏に暮らしていた。そこへホルマリン漬けにされた子供を生き返らせてほしいという女が現れ、仲間の命をたてに上代に能力を使うように脅迫する。
同級生や家族は、上代の視点から見るとまるで影絵のような存在感しかない。ガラス越しに見ているかのような、どうしようもなく隔てられた感覚があり、他の人間とは違うということは、こんなにも同じ空間を共有できないものなのかと薄ら寒い心持ちにすらなった。
死ぬはずだった存在を生き返らせたことは、上代にとって大きな十字架となってのしかかるが、不死身の上代にとっての贖罪とは果たして生きることなのか死ぬことなのか。そもそも死ぬことがない人間は、生きていると言えるのだろうか?
上代の思考は、不死身の肉体のなかをただどろりと巡っているだけだ。
積極的に解決すべき問題、倒すべき敵が見当たらないうちは、上代という存在はだらだらと心地よく揺蕩っているだけなのだろう。それはホルマリン漬けの子供とよく似ている。
瓶の中の子供を生き返らせるのか死なせるのか、決めてしまえばすっきりとすることに間違いはない。けれどこのまま、じわじわとした変化の成り行き任せに、閉じこもっていてはいけないだろうか。
健康的とは言えないが、その揺らぎに共振するとなんだかとても気持ちがいい。もうしばらく、このままとろとろと目を閉じて籠っていたい。そんな気分にさせられるのだ。
そしてその選択の方が、危険が少ない場合もある。
満ちてくる不穏の気配と、それに対する準備に、目が離せない2巻目だった。