大坂将星伝〈上〉
将と星
レビュアー:ヴィリジアン・ヴィガン
安土桃山時代の武将、毛利勝永を描く歴史小説。
上巻では5歳から11歳になるまでが描かれる。幼名は森太郎兵衛。父は羽柴秀吉につかえる黄母衣衆(きほろしゅう)の1人森小三次吉成。
歴史小説をあまり読んだことがないので、読み通せるか不安だった。
困ったのが、登場人物の呼び方である。
例えば、長宗我部元親という武将を会話の中では「土佐侍従」という通称で呼ぶし、息子である信親を幼いころから知っている人物は「千雄丸」と幼名で呼ぶので、慣れるまで、誰が誰なのか分からなくなりちょっと混乱した。おまけに親子は名前が似ている。
ただ、一度慣れてしまえば、織田信長亡き後の戦国時代の風景が、太郎兵衛を通して鮮明に浮かんできた。
太郎兵衛は、後藤又兵衛や、父である森小三次吉成、長宗我部一家から、混迷を極める世の中で、自分がどうあるべきかを学び、徐々に成長してゆく。
吉成との親子の関係が興味深かった。
太郎兵衛の判断は常に父が基準になっていて、秀吉が目の前でどんなにふざけても「父が従っているから凄い人なのだ」と考え、父に対する周囲の武将の態度から「立場的に偉くはないが、皆からは一目置かれている」ことを読み取ってゆく。
幼いながらも父の馬の世話係として戦場に向かい、精一杯、父からの指示に従う姿は、可愛くもあり、頼もしくもある。
一瞬の判断が生死を分ける時代の様子が、生き生きと描かれた物語の「序」。
星の瞬きにも似た武将たちの輝きは、現代においても色褪せることはない。
上巻では5歳から11歳になるまでが描かれる。幼名は森太郎兵衛。父は羽柴秀吉につかえる黄母衣衆(きほろしゅう)の1人森小三次吉成。
歴史小説をあまり読んだことがないので、読み通せるか不安だった。
困ったのが、登場人物の呼び方である。
例えば、長宗我部元親という武将を会話の中では「土佐侍従」という通称で呼ぶし、息子である信親を幼いころから知っている人物は「千雄丸」と幼名で呼ぶので、慣れるまで、誰が誰なのか分からなくなりちょっと混乱した。おまけに親子は名前が似ている。
ただ、一度慣れてしまえば、織田信長亡き後の戦国時代の風景が、太郎兵衛を通して鮮明に浮かんできた。
太郎兵衛は、後藤又兵衛や、父である森小三次吉成、長宗我部一家から、混迷を極める世の中で、自分がどうあるべきかを学び、徐々に成長してゆく。
吉成との親子の関係が興味深かった。
太郎兵衛の判断は常に父が基準になっていて、秀吉が目の前でどんなにふざけても「父が従っているから凄い人なのだ」と考え、父に対する周囲の武将の態度から「立場的に偉くはないが、皆からは一目置かれている」ことを読み取ってゆく。
幼いながらも父の馬の世話係として戦場に向かい、精一杯、父からの指示に従う姿は、可愛くもあり、頼もしくもある。
一瞬の判断が生死を分ける時代の様子が、生き生きと描かれた物語の「序」。
星の瞬きにも似た武将たちの輝きは、現代においても色褪せることはない。