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読者レビュー

銅

大坂将星伝〈上〉

将と星

レビュアー:ヴィリジアン・ヴィガン Warrior

 安土桃山時代の武将、毛利勝永を描く歴史小説。
 上巻では5歳から11歳になるまでが描かれる。幼名は森太郎兵衛。父は羽柴秀吉につかえる黄母衣衆(きほろしゅう)の1人森小三次吉成。
 歴史小説をあまり読んだことがないので、読み通せるか不安だった。
 困ったのが、登場人物の呼び方である。
 例えば、長宗我部元親という武将を会話の中では「土佐侍従」という通称で呼ぶし、息子である信親を幼いころから知っている人物は「千雄丸」と幼名で呼ぶので、慣れるまで、誰が誰なのか分からなくなりちょっと混乱した。おまけに親子は名前が似ている。
 ただ、一度慣れてしまえば、織田信長亡き後の戦国時代の風景が、太郎兵衛を通して鮮明に浮かんできた。
 太郎兵衛は、後藤又兵衛や、父である森小三次吉成、長宗我部一家から、混迷を極める世の中で、自分がどうあるべきかを学び、徐々に成長してゆく。
 吉成との親子の関係が興味深かった。
 太郎兵衛の判断は常に父が基準になっていて、秀吉が目の前でどんなにふざけても「父が従っているから凄い人なのだ」と考え、父に対する周囲の武将の態度から「立場的に偉くはないが、皆からは一目置かれている」ことを読み取ってゆく。
 幼いながらも父の馬の世話係として戦場に向かい、精一杯、父からの指示に従う姿は、可愛くもあり、頼もしくもある。
 一瞬の判断が生死を分ける時代の様子が、生き生きと描かれた物語の「序」。
 星の瞬きにも似た武将たちの輝きは、現代においても色褪せることはない。

2014.03.27

さくら
歴史小説の第一の難関は名前なのですわよね。うんうん。そして父>>>>(超えられない壁)>>息子という、父に対する息子の尊敬の熱い眼差し?親子のエピソードってキュンキュンしますわね!
さやわか
呼び名についての指摘は「歴史小説あるある」みたいで面白いですな~。そして、そこを読みこなした後の楽しさに言及する文章になっているので、自分も読みこなしてみたい!と思わせるところがある。文章のテクニックとしては、この呼び名についての話、つまり幼名とか親子の名が似ているという話が、後半の「父と子の関係」という話とうまく関連づけられていると、「おお、うまいねえ」というレビューになるんではないかと思いました。雑多にいろんなことを並べ立てて書いているような文章が、実はさりげなく全体でひとつのテーマをなしている形にするのは、文章構成上とてもいいことです。よかったらやってみてください。ともあれこのレビューには「銅」を進呈いたす!

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