ここから本文です。

読者レビュー

銀

独裁者の最強スピーチ術

独裁者諸君に告ぐ。

レビュアー:オペラに吠えろ。 Lord

 結婚式のスピーチは地獄であると聞く。しゃべる方が、ではない。聞く方が、だ。
 思い返してみれば小学校のころ、朝会での校長の話は5分も続けば、飽きた。運の悪い結婚式のスピーチに遭遇してしまった知人の話によると、その校長の話を30分くらいに引き延ばし、さらに自己顕示欲だのお世辞だのをまぶしたのが結婚式でのスピーチだという。それは嫌だ。想像しただけで嫌だ。おまけにそういう輩は社会的立場が高く、なおかつお祝儀をたっぷり包んでいるものだから誰も何も言えないのだという。いやはや、まさしく独裁者である。

 そんな独裁者諸君に勧めたいのが本書「独裁者の最強スピーチ術」である。悪名高き独裁者であるヒトラーはスピーチの名人だったというのをスタート地点に、彼のスピーチを分析。さらには現代日本で「独裁者」とのレッテルを貼られている政治家である日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長のスピーチと比較するという趣向はそれだけで面白く、なおかつ実用的だ。「人をとりこむスピーチ術10カ条」として要点が簡潔にまとめられているのもいい。

 また本書の中では、ヒトラーのスピーチは2時間以上にわたることも珍しくなかったと書かれている。それでいて人を全く退屈させなかったというのだから、すごいの一言だ。「独裁者」という言葉の響きは悪いが、何かしらに光るところがあったからこそ「独裁者」と言われるようになったのは衆目の一致するところであろう。その一つが、スピーチ術だったわけである。

 せっかくの晴れの場で独裁者にならないために、ぜひとも読んでいただきたい一冊だ。

2013.07.08

さくら
ヒトラーは演説で大衆のハートをキャッチ、洗脳に成功している一方で映画「英国王のスピーチ」の様にスピーチが上手くいかないことで、人から悪いレッテルを貼られる。スピーチこわい!こうなったら、私もこれを読んでレビュアー騎士団を独裁すべく!…嘘です。
さやわか
コンパクトにまとまっている! このレビューは660字程度なのですが、かなり読みやすいですね。しかも内容に過不足がない。書き手の個人的な内容から書き始めつつユニークな視点を持ち、読み物としての本書の価値を語っています。これはうまいと思います。ということでお手本のようなレビューとして「銀」にしたのですが、これを「金」とするにはどうしたらいいか。ヒトラーと結婚式のスピーチの関連は本来弱くて、読者によってはちょっとひっかかりを感じる部分かなと思います。「いやはや、まさしく独裁者である」というのは面白い殺し文句ではあるのですが、スピーチが長いからと言って別に独裁者なわけではないですよね。このレビューは文章力で何とかカバーしてしまっているんですけど、そこをもうちょっとうまく処理してみるといいかなと思います!

本文はここまでです。