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読者レビュー

銅

マフィアとルアー

横顔が語ること

レビュアー:つよし Novice

作品全体に含蓄ありげな、鬱屈した雰囲気が漂っている。同時に、淡い希望にも満ちている。作者の実体験がとか、この場面の表情がとかあれこれ考えながら読むのも楽しし、逆に深く考えず、作品の空気に引きずられていくのを楽しむのもよい。

「トリコの娘」
炊飯器と共に男の前に現れた女。男は戸惑う様子もなく彼女を受け入れ、彼女の言動を見透かすような所さえある。
男が感じさせる不気味さから一転、正気に戻っていく彼女を見つめる、諦めたような優しい表情が切ない。彼女との未来があるか知れないのに、その他の未来は切り捨てる覚悟を決めている。彼女との未来を願うことは、彼女のこころの不健康を願うことになる。男の横顔は、そんなこととうに飲み込んでしまったのだろうと感じさせる。

2013.07.08

さくら
回を重ねる毎にレビュアーさんが増えて嬉しい限りですっ。私も読んでみて横顔の姿がとても印象的でした。TAGROさんの絵はなにか独特な憂いを帯びた世界観がありますよね。
さやわか
短いですし文章も素朴ですが、これは意外と真剣な、いいレビューだと思います。この本をどういう態度で読むのがいい、という書き方になっているのも好ましいです。後半の「トリコの娘」を取り上げた部分も、作品に対する解釈を書き手が進んで行っていてよいことだと思います。ただ、前半と後半がきっぱり分かれている構成はやはり唐突で読みにくいかなと思います。ここはやはり、前半の話と後半の話をうまく接続するような書き方をするのがいいのではないでしょうか? ともあれいいレビュー。「銅」にいたしました!

本文はここまでです。