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読者レビュー

銅

星の海にむけての夜想曲

佐藤友哉は何処に!?

レビュアー:レディオ Novice

まずレビューを書く前に言っておこう。
私は佐藤友哉という作家は嫌いではない。
むしろ面白い本を書ける作家だと評価している。
しかしこの本では私の好きな佐藤友哉は何処にも居なかった・・・
さてレビューに入ろう。

正直何が言いたいのか分からなかったというのがこの本を読んでの第一印象だ。
これは私の読解力の無さが原因かもしれない。
しかし万人に理解できるストーリーを書けない作家は三流だと思っているのであえて批判する。

ストーリーは一人の少女の思いが受け継がれていくというのは想像できるが、
この空に咲く花に意味はあったのか?全く伝わってこなかった。

この花は我々が生活している中で犯している様々な罪の結果なのだろうか?
いずれ我々の行動が人類を滅ぼすということが言いたいのだろうか?

しかし最終的には未来のために今の人類を滅ぼしても構わないと
(正確には滅亡しないだろうから滅亡させようとしても問題ないと)結論づけており
今の世の中と何ら変わらない思想が繰り広げられている。

とても3.11を生き抜いてしまった僕らのために書いた本とは思えない。
このあたりが非常に残念だ。
しかしこれは作家だけの問題ではない。
このような形式で連載させた編集者にも責任がある。

個人的な印象ではストーリーテラーである佐藤友哉という作家がこのような連載物に向いているとは思えない。
同じ題材で長編を作っていたらと思うと残念だ。編集者の力量の無さのたまものだと感じている。

最後に結論としてはこの本を読むときには佐藤友哉が書いたということは忘れて読んでもらいたい。
結末が意味不明だったり、意外に伏線が薄かったりすることを除けばそれなりに楽しめる作品であるといえる。
興味が沸いた方は是非読んでもらいたい。

2013.07.08

さくら
「興味が沸いた方は」と締めくられているのにレビューを読んでこの本に興味を持てる部分がなかったっ(笑)!レビューのタイトルをもっと掘り下げて「俺の思う佐藤友哉の良さはここだ!」みたいのが聞いてみたいです。
さやわか
このレビューは批判的な内容なのですが、とても愛情がある!好ましく思っている作家が、自分にとってつまらない内容の本を書いてしまったという失望感がよく伝わってきます。「銅」にさせていただきました。惜しいのは、「銀」に相当するような論理性がちょっと足りない文章になっていることですね。たとえば「これは私の読解力の無さが原因かもしれない。しかし万人に理解できるストーリーを書けない作家は三流だと思っている」というのは、ちょっと多くの人を納得させるには苦しい。だって子供から老人まで、ありとあらゆる「万人」が理解できるストーリーなんて究極的には存在しないですもんね。おそらく「自分は作者の意図がわからなかったのかもしれない」と心配に思ったからこそ「わからないようなものを書いた奴が悪い」という理屈を書いたのだと思いますが、そうやって不安を伴いながら書かれた部分は文章にとって弱点になります。だったらこの部分は、わざわざ書かないほうがいいと思いますよ。それから「今の世の中と何ら変わらない思想」なのであれば、「今の世の中」イコール「3.11以後」なわけですから「3.11を生き抜いてしまった僕らのために書いた本」だと言ってもいいんじゃないの?と思わせました。そこも、おそらく先走る気持ちが強いがゆえに、ちょっと論理的に曖昧になってしまったように思います。そのへんをしっかり作れば、このレビューはきっと「銀」になると思いますぞー!

本文はここまでです。