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読者レビュー

銀

大日本サムライガール

家族の前でだけ見せる顔

レビュアー:ticheese Warrior

 『大日本サムライガール』はライトノベルでは珍しく、登場人物の家族とその関係がしっかりと描かれている。
 織葉颯斗は仕事一筋な父親と折り合いが悪い。面と向かうと普段の論理的な思考ができずに感情的になってしまう。
 朝霧千歳は家族思い。事務所でのドジっ娘属性も家族の前では鳴りを潜め、一人前に家業を心配し足の悪い兄を守ろうと必死になる。
 神楽凪紗は日毬に長女の威信を貫き通す。本当は自信のない自分を奮い立たせ、妹の不始末を挽回する。
 個性的な彼彼女らが、家族の前でだけはどこにでもいる普通の兄で妹で姉になる。この変化が登場人物たちの深みになり、そこにいるのは血肉の通った人間だと気づかせてくれた。
 ただ一人、神楽日毬だけは誰の前でも強い自分を保ち続ける。日本を救うんだという決意から。日毬が安心してただの女の子になれた時、『大日本サムライガール』は終わるのかもしれない。願わくば、それが日毬の理想が遂げられた結果であってほしい。

2013.07.08

まいか
登場人物たちは、本の中でしか実在という意味で生きられないのですが、それでも「人間」であると読み手が認めてくれたとき、息吹色づくのですね。
さやわか
「登場人物の家族とその関係がしっかりと描かれている」ことがライトノベルとして果たして珍しいのだろうか?と疑問を持ちながら冒頭を読んだのですが、それ以下に書かれていたことはすっきりとした理屈があってよいですね。登場人物の中で主人公である日毬だけが、家族に見せるような情緒的な側面を見せないという指摘に至るラストはうまいなと思わされました。短い中でこういう光る指摘があるのは素晴らしいですね。ということで「銀」とさせていただいております。「金」を目指すとしたら、やはりライトノベル一般を語ってしまう冒頭の一句についてもう少し掘り下げる必要があるのかなと思います。しかし冗長になってしまうので、わざわざライトノベル一般まで視野に入れずに削除してしまい、この作品だけについて論じた形にしてレビューとしての強度を増すのもいいかなと思いますぞ。

本文はここまでです。