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読者レビュー

銀

フィラメントスター

見えるもの、見たい気持ち、そして辿り着く一つのこと

レビュアー:Dual Initiate

フィラメントスターに登場するのはただ1人の女の子だけ。1人で生きているとどれほどのものが見えるのだろう。人は必ず憧れを抱くもの。女の子には空の光が見えていた。手に入れたいと願った。そこからの行為は単純。しかしその想いは複雑。フィラメントスターは展開はとてもシンプルで、そうであるがゆえに無限に想像することができる。女の子の見ていたものとそれをもっと見たいという気持ち…きっと誰しも共鳴できるものではなかろうか。そして辿り着いた一つのこと。そこから女の子はどう生きるのか…

この本をゆっくり読んで、ぜひ想像に浸っていただきたい。何を見て、感じて、行動を移して、どういう帰結を得るのか。短くて、詳しく説明されないがゆえの幅広くある想像の余地。ここがフィラメントスターの1番いいところだと私は思う。じっくりゆっくり考えて…ほら、貴方はどうですか?

2013.06.11

さくら
想像力を掻き立てられる本って読み終わってもいつまでも心のどこかに残っているような感覚がありますよね。Dualさんの場合は何を想像されたのでしょうか?
さやわか
このレビュー、いいですなあ。短く、詩的で、何かフィラメントスターという作品について謎めいた魅力を感じさせる。正直、物語については伝わりきらないのですが、それでもいいと思わせるうまさがある。それはやっぱり「フィラメントスターは展開はとてもシンプル」という部分と、後半の「この本をゆっくり読んで、ぜひ想像に浸っていただきたい」という部分以降がうまいのだと思います。文章が抽象的でほとんど意味が分からなくなってしまう前に、こういう「シンプルな物語なんだ」「想像に浸るような物語なんだ」という説明がサッと出てきて、「わからなさ」を鎮めてしまう。そして、その曖昧さ、想像の余地があることこそが、この作品の最大の良さだと指摘している。これはうまいと思います。「銀」といたしました。これが「金」でないのはなぜかというと、ちょっと書き方として万能すぎるというか、この作品、この書き手ならではのものがちょっと少なく感じられることでしょうかね。中村さんも言ってますが、あとほんのちょっとだけ、この作品の中身とか、もしくは書き手の心情を感じさせる何かがあったら、また違う評価になったかもしれません。

本文はここまでです。