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読者レビュー

銅

星海社

何処へ行こうというのか

レビュアー:ジョッキ生 Knight

 星海社。
 それは出版社である。しかし、やっていることは、一般的な出版社像とはかけ離れたものである。

 声優の坂本真綾さんを起用した朗読会。
 自社出版物の無料ネット公開。
 副社長自らニコ生に出演。
 新人賞応募作への座談会掲載、等々。

 挙げればキリが無いほど、不可解な活動をしている。
 
 さて、この出版社の目的は何なのか?
 推測するに、閉塞感からの脱却を目指しているのだろう。
 この国は村社会である。右向けば右、一体感と言う名の集団的束縛が顕著に見られる。それはある意味では有用で、今ある利益を守り続けるには都合がいい。
 しかし、時代の転換期、それは足枷となる。みんな一緒では身動きが取れなくなるのだ。
 つまり、この会社の行動それ即ち、出版界の衰退を発端としているのではないだろうか。
 であるならば、奇抜に見える活動もただ目立つためのパフォーマンスではなく、ある種試行錯誤の産物と考えられる。
 パイオニアと呼ばれるいくつかは誕生は、奇跡による。精子が卵子に受精するように、多くの犠牲の果て、たった一つが辿り着くそんな奇跡。
 この出版社はその一端を担っているのかもしれない。

 とはいえ全ては推測の域を出ず、これがただの妄言である可能性も多分に孕んでいるので、真意に関しては個人個人が判断して欲しい。
 でも、一つだけ言えることは、僕個人この出版社を応援しているし、そのために出版物も多々購入しいる。
 何が言いたいかというと、応援する意志が少しでもあるなら、そこにお金を落として欲しいということだ。
 あれ?急に出資金詐欺みたいな流れになってきたけど大丈夫かな?
 でも、これは本当。楽しんだならその分何かを還元してあげないと、そのコンテンツはいつか死ぬ。ゲーム業界が割れに苦しんでいるのも同じ状況だと思う。
 
 これは一出版社の話だが、全てに通じることだ。みんなでハッピーになろうじゃないか!そんな僕の願いは世界平和です。

2013.06.11

ゆうき
この“レビュアー騎士団”も、他には無いような新しい企画ですよね! 他にはないからこそ、「何処へ行こうというのか」分からない…!皆さん、遅れずについて来て下さいね!
さやわか
文体が熱っぽくて、とても好感が持てるレビューです。業界全体に対する真剣な気持ちも伝わってくるように思います。「みんなでハッピーになろうじゃないか!そんな僕の願いは世界平和です」という結びもすげえ! 豪快だ! と思いました。ジョッキ生さんの文章にははっきりした書き手の個性が出ている。そこが最大の魅力です。「銅」にいたしましょう! もっともその明快さゆえに、ちょっと突っ走りすぎなところもあります。たとえば「自社出版物の無料ネット公開」「ニコ生に出演」くらいだったら、別の出版社でもやっているような気がしました。ただ僕が言いたいのは、必ずしも「他の会社がやっていない例だけを挙げなさい」ということではありません。要するにこういう文章というのはケチがつかなければいいので、この圧倒的な個性を磨いて、そんな細かなことなんてどうだっていいぜ! と言われるほどパワーを増していくという手もあります。そういう書き手はレビュアー騎士団には珍しいのですが、それができる人は一番強いと思いますぞ。

本文はここまでです。