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読者レビュー

銅

フェノメノcase:01 「願いの叶う家」

幽霊の正体見たり枯れ尾花

レビュアー:Panzerkeil Adept

「幽霊の正体見たり枯れ尾花」という言葉がある。幽霊を怖がっていると、何でもないものが怪異なものに見えてしまうという事だが、もし、幽霊が実在していたらどうだろう?精神的に弱い人間は、幽霊の正体を枯れ尾花に無理矢理してしまう必要が生じるかもしれない。
大学に入学し、下宿として安い一軒家を見つけた主人公。高名な建築家が仕事場として建てたという、まるで綾辻行人の館シリーズを思わせる変わった山荘風の建物はミステリーホラーの舞台としてぴったりだ。
そこで生じた主人公を追いつめる怪奇現象、彼はしばしば出入りしているインターネットのオカルト板の住人に助けを求めるが、彼の前に現れた二人の少女によって、幽霊か、それとも枯れ尾花かという岐路に立たされる。
ただ、枯れ尾花説にはかなり無理があるように思われる、果たして家の作りが人の精神をあれだけ追い込む事が可能だろうか?このまま枯れ尾花で終わるのかと危惧したが、そうはならなかったものの、枯れ尾花説にもう少し説得力があれば、最期のどんでん返しがもっと生きたのにと思う。この点は少々残念である。
ただし、二人の少女ともうひとり(彼女は少女とは言えないか)の個性というか奇矯な様は結構ですね。これから先が実に楽しみです。
リアルでは心霊現象なんて、私は信じていませんが、幽霊かそれとも枯れ尾花かという選択に近い事はあります。自分は職業柄、山の中を一人で歩く事が結構あるのですが、結構出くわすのです、色々な死体や骨に。
もっとも、大半は野生動物のものですが、首都圏からさほど離れていない天狗伝説のある、観光地としても有名な某山は自殺の名所でもあり、数年歩いていると一度は生の遺体を拝めると言います。幸いにして、自分はまだ経験はありませんが、暗い沢で花や線香が置かれているのを観るのは気持ちの良いものではありません。
私は生物学もかじったので、時々、ちょっと考え込んだりする事もあるのですが、これは人の骨じゃ無い!鹿だ!と自分に言い聞かせます。枯れ尾花であると自分に言い聞かせるのです。まあ、真実は意識の下です。
 枯れ尾花で満足ぜずに一歩踏み出してしまった主人公は果たして、どうなるのでしょうか?まあ、これは先を読むしか無いですね。

2013.06.11

さくら
よくわからないものって怖いです…わからないからこそ想像しちゃってさらに増していく恐怖。あらやだ!なんか怖くなってきたっ!!
さやわか
Panzerkeilさんのレビューには不思議な読み応えがありますね。何かハッとさせられるような知識が加えられていて、しかも読みやすい。面白い個性だと思います。このレビューも「枯れ尾花」という題材で最後まで引っ張っているのがうまい。レビューのような短い文章でこういう小道具を持ち出すと、しばしば人はすぐに捨ててしまうものです。つまり特に使い道もなく、かっこよく書いてみただけで終わってしまう。しかしこのレビューのように、最後までそれを絡めながら文章をかけるなら、レビューのかっこよさは雲泥の差になります。圧倒的に面白いものになる。Panzerkeilさんのレビューにはそういうかっこよさがある。ちょっと残念なのは、このレビューのラストが「本編を読め!」みたいなところで終わってしまっているところでしょうかね。中身について書かないという書き手の心情もあるのかもしれませんが、あえて「あとは読んでのお楽しみです」みたいな感じで終わってしまうと、読者を「なんだ結局読まないとわからないのかよ」という気持ちにさせてしまいがちです。つまり、レビューを読んだ人がちょっと損した気になってしまうのですよ。どうかすると内容を語ってしまってもなお、その本が読みたくなる。そんなレビューならすごいと思うのですが……どうでしょうか? 今回はひとまず「銅」とさせていただいております!

本文はここまでです。