大岩賢次『エレGY』
グッドループ
レビュアー:ticheese
ネットで無料ゲームを配布し、関連グッズで生計を立てる天才クリエイタージスカルドは、現実では家賃の支払いにも困る貧乏人泉和良でしかなかった。ジスカルドのファンである女子高生エレGYを前にして、そのギャップに苦しむ泉和良の姿を一気に描いた名場面が、大岩賢次の『エレGY』コミカライズにある。
ジスカルドが踏切の開かれるのを待っている10ページ間。エレGYとの恋に期待し、夢を膨らませるジスカルドは、泉和良自身の現実を思い出し、絶望に身を焦がす。ジスカルドが泉和良に変わる瞬間、電車が風圧を伴って彼の前を駆け抜ける。結局は吹けば飛ぶような夢なのだ。画面上で恋に輝く青年の顔は、途端に冴えない眼鏡男の顔に変わる。
実はこのシーン、私は原作にあったか覚えていなかった。泉和良は作中ずっとジスカルドとのギャップに悩み続けているし、そもそも電車が駆け抜けるというのは視覚的表現だ。あまり印象が強くなかったのかもしれない。しかし探してみると原作には確かにあったのだ。
大岩賢次の描く『エレGY』は、こうして原作の一場面を、漫画でなければできない方法で文字通り絵で描き出す。私はその度に原作を手にとり、彼の内情を余す所なく読み尽くす。大岩賢次の漫画がスパイスとなり、以前より鮮やかに感じ取れるようになるのだ。
これから漫画がクライマックスに向かい、私の好きだった名場面がどう描かれるのか、楽しみで仕方がない。
ジスカルドが踏切の開かれるのを待っている10ページ間。エレGYとの恋に期待し、夢を膨らませるジスカルドは、泉和良自身の現実を思い出し、絶望に身を焦がす。ジスカルドが泉和良に変わる瞬間、電車が風圧を伴って彼の前を駆け抜ける。結局は吹けば飛ぶような夢なのだ。画面上で恋に輝く青年の顔は、途端に冴えない眼鏡男の顔に変わる。
実はこのシーン、私は原作にあったか覚えていなかった。泉和良は作中ずっとジスカルドとのギャップに悩み続けているし、そもそも電車が駆け抜けるというのは視覚的表現だ。あまり印象が強くなかったのかもしれない。しかし探してみると原作には確かにあったのだ。
大岩賢次の描く『エレGY』は、こうして原作の一場面を、漫画でなければできない方法で文字通り絵で描き出す。私はその度に原作を手にとり、彼の内情を余す所なく読み尽くす。大岩賢次の漫画がスパイスとなり、以前より鮮やかに感じ取れるようになるのだ。
これから漫画がクライマックスに向かい、私の好きだった名場面がどう描かれるのか、楽しみで仕方がない。