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読者レビュー

銀

僕は写真の楽しさを全力で伝えたい!

もはや、8°(ぱち)ではない

レビュアー:ヴィリジアン・ヴィガン Warrior

 8°(ぱち)を3つ作った。
 ひとつは、親戚のおばさんに。
 残り2つは従兄の子供、小学3年生の女の子と、小学1年生の男の子に。

 4月、大阪に住む従兄家族の所に遊びに行った。その時の写真を現像に出しに、地元の小さな写真屋さんに行った。
 写真はiphone5で撮影した。
 旅行に行く前「デジカメを持っていく」という選択肢がなくなっていたことに少し驚いた事を思い出す。
 狭い写真屋の店内には、パソコンが何台か置かれていた。アップルのバカでかいパソコンとつないで、写真データをコピーしてもらい、旅先で撮った写真の中から選んでゆく。
 そういえば昔「写ルンです」とかあったなぁ。「フィルム巻くの忘れた」とか「念のためもう1枚」とかあったなぁ。
 ブレた写真も、ピンボケの写真も選ぶ前からない。撮ったとき失敗したら消しているからだ。
 多めに37枚注文する。1枚15円で、現像(プリントアウト?)には1時間もかからない。
 100円ショップで、画用紙を買ってきた。10枚で105円。
 8°(ぱち)を作るために折ってゆく。
 カッターで切れ目を入れる。カッターを引越しとかの「作業」ではなく「図画工作」的に使うのは、いつ以来だろうか? カチッ、カチッ、と刃を出す音が心地よい。
 強力スティックのりで写真を貼り付けたが、表紙にした1枚目は付け方が甘かったらしく剥がれそうになった。なので、残り2つの8°は両面テープを上下に貼って止めることにした。家の引き出しには、両面テープがほとんど手つかずの状態で3つもあった。何に使うつもりだったのだろうか? まあ、使い道は見つかった。そのうち無くなってしまうだろう。
 画用紙で作った手作り感たっぷりのアルバムが3つできた。
 おばさんには、孫の可愛さと、息子家族がどんな所に住んでいるのかわかる8枚。
 女の子には、彼女が可愛く写っている8枚。
 男の子には、元気にはしゃいでいる彼が格好良く写った8枚。
 自分が良いと思った写真は、おばさんにも、子供達にも送りたくなる。だが、同じ写真でも届ける相手が違えば、意味や、見て欲しいところが変わるから面白い。
 1枚ごとに(1)~(8)までの番号と言葉をそえた。
 おばさんは近くに住んでいるから直接渡せるけれど、従兄の子供達には手紙と一緒に送ろうと思い、数日そのままにしていた。
 ある日の夜、布団に入ってから急に閃いた。
 残りの写真で、従兄夫婦にもう1つ作れないか? そんでもって、パチの裏側(内側)にiphone5のパノラマで撮った写真を貼れないか?
 パノラマの写真は2枚あった。偶然2枚とも従兄家族の住むマンションの付近の風景だった。
 写真屋さんをまた訪ねた。パノラマ写真のことを伝える。2枚だったらデータをメールで送ってくれと、アドレスのメモを渡してくれた。田舎なのに微妙に未来を感じる(笑)。
 パノラマは2枚で200円だった。
 さっそく帰って貼り付ける。パチの裏側に2枚の長い写真を、折り目の所で切って貼り付けた。
 畳まれた本の状態から開くと裏側にパノラマ写真が2枚どーんと広がる。(9)(10)と番号と言葉を添えて、もう8枚じゃないから8°(ぱち)じゃないなぁ、とか思う。
 でもまあ、パノラマ写真は現像しても相当大きなアルバムじゃないと入らないから、中々いいんじゃない? このやり方はありですよね? 青山さん!
 従兄家族は喜んでくれるだろうか? 喜んでくれたらうれしい。
 どこかに行って楽しかったことも、こうやって形にしなければ忘れてしまう。忘れてしまえば無かったことになる。楽しかったことを思い出すきっかけが、少しでも多い人生の方が楽しいに決まっている。
 8°(ぱち)と一緒に送る子供達への手紙には、昔は「写ルンです」っていうので写真を撮ってたんだよ、とかそんなことを書こうと思う。

 結局8°(ぱち)を4つ作った。

2013.06.11

さくら
人を想いながらアルバムを作っている光景っていいですね。8°がなんだかわからないままでした。カメラって撮っている時が楽しいという印象ですが、撮った後の作業も心から楽しそうにされているのは、きっとこの本の影響なんだろうなーってあったかい気持ちになりました。
さやわか
おおお! このレビュー、すっごくいいと思いますぞ!!! 本を読んだ体験についてではなくて、本が与えた知識によって自分がどう行動したかが書いてある。しかし、そこにはデジタルカメラどころかスマートフォン全盛の現代について語られていたり、写真屋さんで見かける風景のことが差し挟まれていたりする。それから、自分が誰に、どんな気持ちで「ぱち」を作ったかということが臨場感たっぷりに書かれているのもいい。そして「このやり方はありですよね? 青山さん!」というところで本の著者へフィードバックする。そして、「ぱち」を作る意義についてもちゃんと語られている。素敵な文章です。平易な言葉遣いなので気づかれにくいと思いますが、書き手はレビュアーとしてしっかりした力を持っています。中村さんもおっしゃってるように「ぱち」って何? というのが読んだ人に伝わりきるかだけが微妙なところと思いました。そこが惜しい! ということで「銀」にさせていただきました!

本文はここまでです。