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読者レビュー

銅

唐辺葉介『死体泥棒』

エンドレス・プラネタリウム

レビュアー:ユキムラ Adept

 主人公が恋人の死体を盗みだして一緒に過ごした蜜月は、どこかプラネタリウムに似ている。
 昼に繰り広げられる偽りの夜空が決して夜闇を彩る星たちになれないように。
冷凍庫の扉越しの日々は、過ぎし日の逢瀬とは決定的にナニカをたがえている。

 このプラネタリウムは、永遠に続けば良かったのだろうか。
主人公は、このプラネタリウムを永遠に続けたかったのだろうか。
 問えども問えど、応えは無く答えは出ない。
私達読者にできることは、それを想像することぐらい。
 ――――否。
そんな邪推はもはや無粋でしかない。
文字を追ったところで読み取れるは、自身すら騙していかねない、或る愚公の世迷い言。

 だから。
「この星空は綺麗だね」って。
騙されたフリをして、プラネタリウムを眺めるだけなのもまた一興かもしれない。
偽りの夜空は近く暁に殺されて終わってしまうけれど。
二人の物語を綴ったこの本の記憶は、あるいは永久に、私達の中で息吹き続けるのだから。

2012.06.08

のぞみ
例え、偽りの日々でもそばにいたかったのですよねー。
さやわか
プラネタリウムにたとえるのはうまくいっていると思います。端々で「冷凍庫の扉越しの日々」とか、作品を知らないとわからないような言葉が使われているのが気になりますが、短さのせいもあって読み通せないというほどではない。「銅」にいたしましょう。しかし好みではありますが、個人的にはこうした書き手にはここから「銀」を目指してほしいなと思うところではあります。自分の感情と感性をあふれ出させるところから、それを読む人に最大限に伝えるというところに到達すれば、もっとよくなるのではないかな、と思います。

本文はここまでです。