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読者レビュー

銅

虚淵玄『Fate/Zero』

想いに理由は必要ですか?

レビュアー:ユキムラ Adept

 言峰綺礼が好きである。

 闇の中に一人佇む その立ち姿。
誰にも理解されずにいたサダメを背負って、ただ求道に生きる迷子。
自分の生きる意味を求め、その愉悦が狂っていることの意義を求める探求の者。

 自身の魂の在り方に苦悩していた一人の男が、やがて己を知ることで堕ちてゆく。
その姿は、私の目にはとても美しく見える。

 衛宮切嗣がたったヒトカケラの安堵をいだきて死したのと対照に。
死することすら許されず、言峰綺礼は闇夜の日々を消化し続ける。
作品中、きっと誰よりも混沌とした闇夜を背負っているにもかかわらず――あるいはそれゆえに――私は、この男が眩しいのだ。
 それは、言峰綺礼が背負う悲哀ゆえか。
他者とは決して相容れられぬ制約を埋められた者への、憐憫か。
一人で生きることを覚悟したその背中に、自分には無い確固たる決意を見たせいか。
 ――否や。
 私の小さな価値観で、彼への想いは定義できない。
酩酊のようなこの感情に、理由など きっといらない。名前すらつけたくはない。
作品という名の酒精を呷り、気づけばこの想いに囚われていた。
いつから酔いが回ったか...なんて、そんなの訊くも野暮じゃない?

 だって、私は本当の本当に、綺礼さんのこと好きなんだもん。

最前線で『Fate/Zero』を読む

2012.06.08

さやわか
言峰綺礼という人物が好きだ! という気持ちが前面に出ていて、これはこれでレビューとしてはアリですぞ! 酒の比喩が出てくるのも、『Fate/Zero』における言峰綺礼の佇まいを思い出させて、作品を読んだ人には楽しめる部分かもしれません。「銅」とするのには十分なのですが、これをもっと幅広い読者に読んでもらって、『Fate/Zero』という作品、あるいは言峰綺礼というキャラクターの魅力を伝えるには、まだまだできることは多いだろうなと思います。まずは、作品を全く知らない誰かに読ませるつもりで書くのはどうかな、と思います。とたんにこの書き方では書きにくくなるかもしれません。しかし、それを乗り越えた方が、結果的にこの書き方の上でも優れたレビューになると思いますぞ!

本文はここまでです。